21-3.嘘つき➖帰る場所

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 「ヴィンセント。お帰りなさい。」  ………え?  気がついたら、ヴィンセントはまた、あのエーセンの町にある二階建ての家の前にいた。  今度こそ死んだと思っていたのに。  リアだ。リアがいる。  彼女はイヴではなく、彼女のままでそこにいる。  美しい銀糸のようなホワイトブロンドの髪に、青空のような、または彼女が好きなネモフィラの花の色をした、ターコイズブルーの瞳。  白い肌。優しげな目。微笑む口元。  華やかながらもシンプルなワンピース姿がよく似合っている。  あの時豊穣祭で着ていた服に似ている。  「……ただ、いま。」  訳が分からない。  ヴィンセントはリアが笑いながら手を差し伸べているのを見て、不器用ながら自分も微笑み返した。  そこにもう一人の影が現れた。いや、違う。  二人いる。  「お帰りなさい、おとうさん。」    「お帰りなさい。パパ。」  自分をパパと呼ぶ、アイスシルバーの髪に、宝石の様に綺麗な赤い瞳をした小さな女の子。  その隣にいるのは、リアによく似た男の子。  「この子達は一体……」  無邪気に、ヴィンセントの片手に掴まって戯れる、見た事もない子供達。  首を傾げたヴィンセントの目の前で、リアが笑う。  「何を寝ぼけているのよ、ヴィンセント。  二人とも貴方と私の子供でしょう?」  「あれ……そうかな。  そう……だったかな。」  「そうよ。とにかく早く家に帰りましょう。  ヴィンセント。  早く帰って、美味しいご飯を食べましょう。」  リアの華奢な手が、ヴィンセントの手を掴んだ。  その手はもう一生離れないのではないかというくらい、しっかりと繋がれていた。  ……温かいな。  自然とヴィンセントの瞳から涙が溢れた。   これは嬉しい時に流れる涙だ。  「そうか。俺には帰る家があったんだ。  ここが、帰る場所だった……  こんな風に、帰る家がずっと欲しかった。」  温かい家。愛おしい妻が幸せそうに笑っている。  無邪気で可愛い子供達がいる。    ……帰ってきたよ。もうずっと、ここにいる。  本当に、幸せだ……………………………  ◇  ヴィンセントが亡くなった数ヶ月後、リアは無事に子供を出産した。  男の子と女の子の、双子だった。
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