幽霊の涙

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「言ったら、お父さんが嫌な思いをするだけよ」 「そんなことないと思うけど」 「いいの、このままで。──それにやっと再婚できてお父さん幸せになったんだから煩わせたくない」 「でもさ」 「それに新しいお母さんも良くしてくれるの。妹の秋ちゃんも可愛い」 「なら、なおさらさ」 「普通じゃないなんて知られたくないの。それにメガネって色が着いたメガネでしょう。そんなの着けたら私が色覚異常者だってまわりに教えているようなものじゃない。そんなのみんなの噂の餌食にされるわ。また苛めに合うじゃない」 「でもさ、信号とかあぶな」 「永田君にはわからないのよ」  言葉にカチンときた。  ああ、わかんないよ。でもさ俺だってお前を思って色々調べたんだ。なんだよ頭ごなしに……。 「あのさ、お父さんは仕事ばかりしてて気づかないかもしれないけど、新しいお母さんは一緒に暮らしている以上、違和感に気がつくんじゃないの。だったら自分から言えばいいじゃん。悪いことじゃないんだからさ」 「やめてよ。普通の人には私の気持ちなんてわかりっこないんだから」  そう言って今にも泣き出しそうな表情で深森は怒り学校へ走っていった。  正直。言いすぎたと思った。  折角抜けたトゲが倍に増えて突き刺さった。  傷つけるつもりじゃなかったんだ。  最後の冷たい北風が、びゅうっと二人の間を通り抜けた。  学校についてもお互い話すこともなく。目を合わすこともなかった。そしてとうとう俺たちは喧嘩したまま春休みに突入したのだった。
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