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「なぁ、兄ちゃん普通ってなに」
兄はベッドに寝っ転がりスマホを弄っている。俺は床に座り背をベッドにあずけた。兄はスマホを触るのをやめ脇に置いた。
「なんだろうな難しいな。普通って定義にするから難しいんだろうな。俺から言わせれば普通じゃなく、風変わりって言い回しになるんだけどな」
「兄ちゃんが言うと、なんか説教ぽいよ。ねー。目の見え方が違うのって親に言えないことなのかな」
「さぁな、その子の考え方だろうな」
「深森は言えないんだって、黙ってて辛くないのかな」
「それがその子の優しさなんだろうな」
「うん」
俺はそれ以上言葉が見つけられなかった。
そうなのだ。優しいから親には言えない。でも隠し通すってどれだけ大変なのだろうかと、ない脳ミソで考える。
きっと辛くないわけがない。
俺なら兄ちゃんに相談する。でも深森はずっと兄弟がいなかったんだ。母もいない。相談できる人がいない。ようやく出来た新しい家族。
ああ、嫌われたくないよな。
学校でいつも下ばかり見ている深森。
「深森が上を向いて生活できるようになれればいいのに」
ぼそりと言うと兄は優しく笑って、俺の頭を撫でくりまわした。
「やめろって、なんだよ兄ちゃん」
「お前は可愛いな」
「ああ。喧嘩売ってんの」
「あはは」
それでも兄は俺の頭を撫でるのを止めなかった。こんなときはマジで鬱陶しい。
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