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「私、ずっと桜が大嫌いだったの。虐められた原因だし、それに私には茶色の花に見えていたから、枯れ草とそんな変わらなくて、綺麗だなんて思ったこともないんだ。ずっとなんでそんな汚い花の名前をつけたんだって思ってた。だって私には秋に散るイチョウの葉のが綺麗なんだもの、でも、今はみんなが綺麗だって言ってる桜の花を見てみたいの。そう思えるようになったのは永田君のおかげだよ」
晴れやかな深森は、俺の今まで知ってた深森咲楽ではなかった。たぶんきっと、これが本当の深森咲楽なんだろう。物静かなだけの女の子じゃない。きっとお喋り好きな普通の女の子だったんだ。
「俺は何もしてないよ」
「そんなことないよ。目のこと受け入れてくれた。凄く嬉しかったの」
素直に気持ちをぶつけてくる深森に、なぜか俺の背中がこそ痒くなった。
そんな真っ直ぐ俺を見るなよ。
いつも深森を盗み見していたくせに、まともに目が合わせられない。眩しいほどに深森は「ふふ」っと笑った。
馬鹿。そんな嬉しそうに笑いかけるなよ。目のやり場に困る。なぜかそんなことを思った。
そんな俺の心境も知らず深森は話続けた。
「私、1度検査しようってことになって眼科に行くことになったの、だからね、どうしても永田眼科がいいって言っちゃった」
上目遣いで俺を見つめる深森。
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