幽霊の涙

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 その信頼した目は、俺を頼ってくれているのだろう。実際見るのは父だけど、深森のためなら俺は苦手な父だろうが相手してやろうと思った。 「なら俺が予約しといてやるよ」  と心から言葉が出た。 「えっ。わるいよ。自分で……」 「やらせろよ、それぐらい」 「……うん。ありがとう」  ざわっと家の木の葉が揺れた。  深森の前髪が掻き分けられ、柔らかな笑顔が写真のように焼き付いた。  触れたい。  それは髪なのか肩なのか手なのかわからなかった。この感情はどこから湧いてくるのだろうか。  ああ、ずっと押し込めていたが、これは認めるしかないのかな……。  深森はその後、何度もお礼を言って家に帰って行った。  俺は照れ隠しに鼻の頭を擦る。そして、どうしたもんかと首をひねった。  父を説得しないといけない。以前、友達の眼科の予約を安請け合いしたら、どえらい怒られたことがあった。絶対に雷が落ちるだろう。  それでも、どうしてもなにか力になってやりたかった。  ばたん。と玄関の扉を閉めると兄が「お前。格好いいじゃん」なんて冷やかしてきた。 「別に」  素っ気なく答えたが、風船のようになんだか心が軽くなった。
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