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深森は頬を少し赤らめた。俺は食い入るように上から下まで深森を凝視した。私服姿の新鮮さで、なぜか俺の心臓がドキリと跳ねた。
長い漆黒の髪を軽くカールさせ、ピンクのリボンが結われている。清楚な真っ白なワンピースを着こなし、鞄は意外な真っ赤だった。
こわ。女は化けるな。
その以外な可愛さに、なんだか心がそわそわした。俺はまぎらわすように目を泳がせ
「深森ってピンクが好きなのな」
と聞いた。
「えっ……」
「だってリボン」
ぎょっとする深森。俺はそのときほんの少し違和感を感じた。
「失礼します」
小さな声が俺をすり抜けていく。
「──って深森。そっちは男子トイレだって」
ビクリとして振り返る深森。ますます顔を赤らめる。なんだか可笑しくて俺は盛大に笑った。
「ははは。なんだ深森って、おっちょこちょいなんだな。しっかりマーク見ろよ」
何気ないその言葉に深森は、ぎゅっと口を引き結び涙目になった。
「今度から気をつけるね」
言って深森は走り去ってしまった。
ぼつりと残され、俺は沈下した炎のようにブスブスと嫌に燻る感情がベタつくように張り付いていた。
なんだよ。なんでそんな泣きそうな顔になるんだよ。
一気に興が冷めた。
傷つけるようなこと言ったか? ちょっと笑っただけじゃん……。
涙目の深森が脳裏に焼き付いた。
悪いことをした罪悪感がしこりのように心に残る。しかし、まったく深森が理解できず俺はだんだん腹が立ってきた。
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