幽霊の涙

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 変な奴。変な奴。変な奴。──怒りをぶつけるように俺はクレーンゲームに没頭した。 「駆、なにかあったのか?」 「別に」 「愛想笑いが崩れてるぞ」 「……」  優に言われたが、優相手にわざわざ疲れる愛想笑いを出来るわけがない。  そのあとは散々だった。乱れた心のせいで、ひとつのクレーンゲームに三千円も投入してしまった。  どよん。  あんなに晴れていた空もいつの間にか厚い雲に覆われ、俺の晴れやかな気分は反転した。  俺の三千円返せよ深森!  っと理不尽に心のなかで罵倒したのだった。 ***** 「なぁ、深森ってどんなやつ」  クラス委員の陽子に聞いてみた。陽子は要領よく、なんでもこなし、クラスのことをよく見ている。しかし率先して面倒ごとには首を突っ込まない。わかっていても助け船を出すタイプではない。聞けば答えてくれるので女子のことで聞きたいことがあれば、だいたいみんな陽子に聞いていた。 「さぁ。なんか幽霊みたいな子かな」 「幽霊?」  意外な答えに俺は驚いた。 「だって気配を感じると居るって感じなんだもん。普段は視界に入らないのに、時々、目につくの」 「へぇー。例えば」 「そうね……。そうだクリスマスの日にさ、家庭科で小さなクリスマスケーキ作ったよね」 「そんなこともあったな」 「スポンジは用意されてて、生クリームとイチゴを載せてデコレーションしたでしょう。あのときさ、深森さん、山盛りにあったイチゴの中から、青い苺ばかり選ぶんだよ。全部じゃないけど、何でって目についたんだよ」 「残り物が青かっただけだろう」 「違うよ。左から順番の席から5個持っていきなさいって先生が言ったじゃん。永田君忘れちゃった」 「そうだったっけ」 「そうだよ。始めの方に取りに行ったのに、なんで不味そうな苺を選ぶんだろうって、やけに目についたんだぁ。他の子はクスクス笑って幽霊だから青いのがいいのかなって言ってたけど」  それを聞いて、陽子の友達が机に肘をついてクスクスと意地悪く陽子の陰に隠れるように笑っている。  感じ悪い奴ら。
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