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「お前も女に興味を持つ年になったんだな」
「なっ。違うわ。だいたい俺は深森が苦手なんだよ」
「ははは。そのわりにはよく見てるようだがな」
俺の顔が火照った。
「もういい、兄ちゃんに相談したのが間違いだった」
青いベッドの前にあるちゃぶ台を、どんと手をついて俺は立ち上がる。
自分は彼女がいて女の子に余裕があるからって、その物の言い方はないじゃんかと腹が立った。
「怒るなって、いいからちょっと座れ」
「うるさいな」
「駆」
「……」
兄が真剣の表情をする。決まってそういうときは兄の言うことを聞いた方がいいっと経験上わかっていた。
俺は怒りを抑えてぶちぶちと文句を言いながら、ちゃぶ台の前に座り直した。兄は余裕しゃくしゃくで顎に手をあて、目をつぶり、何かを考えている。立ち上がると本棚から何冊か出しペラペラとめくり出した。
「兄ちゃん?」
「その子、もしかして色覚異常なんじゃないか」
「なにそれ」
「お前。眼科の子供だろう。それぐらい知っとけよ」
本気で驚いた顔をする兄に、俺は拗ねたように頬をハムスターのように膨らませた。
ふーんだ。兄ちゃんが眼科の跡を継ぐんだから興味もないんだよ。いいだろう知らなくたって。
兄は呆れたような顔をして「まぁ、この時代だから仕方がないか」なんて言った。
「色覚異常とは色の見えかたが普通と違って見える人のことだよ」
「そんな病気あるの」
「大きくわけると、先天性のものと、なにかの原因でなる後天性のものがあるそうだよ。──病気なんて色々あるさ。って言ってもこれを病気と言うのはどうかと俺は思うけどな。まぁ、個性だろう。色の見えかたが違うだけなんだから」
「どう見えるんだよ」
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