プロローグ

1/2
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ

プロローグ

『運命を変えたくはありませんか?』 ✳︎  僕にはいつも見る夢がある。  白黒の床に黒い闇の部屋の夢だ。その夢には僕の他に住人は居ないけど、僕はちっとも寂しくない。  とある日から、僕はその夢空間の”続き”まで踏み出せるようになった。どこか見覚えのある石畳と煉瓦の街は、中心地にある大きな鐘楼に繋がっている。  僕はきっとこの街に居る”彼女”を殺さなくてはならない。今日もひらりひらりと僕の前に現れた黒いフードの少女を追いかける。 「お前さえ居なければ、僕達は不幸になることなんてなかったのに!」  街中に飾られた花も、うたた寝をするネコも、僕にはひとつも関係ない。僕はかけっこで鍛えた足で必死に街中を駆け回った。  けど、前を走る黒の猫耳のフードを被った小さい身体は一向に捕まらない。長い赤い髪を左右に2つに分けて、緩いおさげのようにしている彼女は、息一つあげていない。まるで、踊るかのように軽快に噴水の角を曲がった。 「待って!」  コースはもう終盤戦。  鐘楼の階段をぐるぐると上がって、一番上の鐘のあるスペースまで走る。僕はもう汗だくだ。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!