連還する記憶 ⑤

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また、ヒトの知能の働きには、言葉の運用という作用があります。話す,聴く,読む,書く,聴いた言葉を繰り返す,などなど、母語の言語知識を駆使することで、日常的な言語活動を行うことができます。 ヒトの知能の究極の仕事としては、創造という成果が挙げられます。創作や発明、あるいは新しい考えの体系化など、それまでなかったものを産み出す働きがあります。 これら知的行為の成果に共通していえることは、明確に把握された未来の出来事や考え方であり、実際に起こったことではなく、記憶の集積回路に保存された観念的な知識の集合体、という事実です。 ただ、自然科学の研究において、知能の働きの一つ、推論によって導き出された仮説が、画期的な大発見につながることが、よくあります。 仮説は、実証されるまでは空論にすぎませんが、実証されると厳正な事実となり、定理となる場合もあります。ただ、実証されても、それを事実と認知せず、それどころか、空論として解釈させる対立概念を導き出すことができてしまうのも、知的行為がもつ能力の一つです。 いまだガリレオを嘘つきといい、ダーウィンの進化論を否定する知的行為も、観念の世界では可能です。このようrに、もし観念記憶が、自然科学の実証記憶やヒトの血肉と連還する生命記憶と没交渉であるかぎり、閉ざされた集積回路の内側だけで完結する記憶の集合体にすぎなくなってしまいます。
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