連還する記憶 ⑤

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<閉ざされた集積回路内で完結する観念記憶> 人工知能を例にとってみましょう。 人工知能とは、適切で実現可能な手続き(アルゴリズム)と、豊富なデータ(事前情報や知識)を準備することで、これまで人間にしかできなかった知的な行為を、あたかもヒトが知能を働かせているように、機械を働かして成果を得るために開発された、人口の知能体系です。 この機械的な知能体系の核はメモリー、すなわち記憶です。記憶装置を備えた機械に、情報、知識、言語、運用方法などを入力し、記憶させ、それを演算させることにより、機械は、解を引き出し、結果を提示し、成果として記憶の集積回路に記憶を保存し、新たな入力情報としてフィードバックすることができます。 この入力・演算・集積・保存・フィードバックの繰り返しにより、人工知能はより大きく、より緻密に、より速く演算できるように進化しますが、観念記憶の演算集積回路内で完結する電源依存の知能体系にすぎないので、生命体であるヒトからみれば、不安定で脆弱である反面、危険な装置でもあります。なぜなら、身体や心の痛みを記憶することができないからです。  電源をきってしまえば動かなくなるので、根本的に脆弱な体系なのですが、予断をゆるさないのは、その危険性です。 たとえば、閉ざされた集積回路内で完結する観念記憶が、反生命体の観念論で展開されるとしたら、その悲劇的な結末は、想像にかたくないでしょう。まさに、ターミネーターIIが示唆する人類破滅の世界に突き進んでしまう恐れがあるからです。
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