連還する記憶 ⑥

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連還する記憶 ⑥

連還する記憶⑤では、生命記憶と存在記憶と同じ時間と空間を共有しない観念記憶の脆弱性と危険性について、考察しました。 生命体と時空を共有しない記憶、それは、生命と存在の、たえまなく繰り返される連還の有機的記憶の集積(歴史)へのアクセス権をもたない、閉鎖回路内で自己完結する、無機質の観念記憶です。 生命と存在に有機的に関わる記憶には、生命を否定し存在を脅かすものに抵抗し、排除しようとする免疫があります。 これに反し、生命と存在に有機的に関わらない無機質の観念記憶には、生命を否定し存在を脅かされた歴史(記憶の集積)もなく、実感もないので、生命を否定し存在を脅かすものに、そもそも無関心なわけです。 ですから、それに抵抗し、排除する意識も動機もなく、したがって免疫もありません。その結果、生命を否定し存在を脅かすもの(無機質の観念)は、無敵のまま、閉鎖ループの中で、際限なく増殖し、進化していきます。 このように、無機質の観念記憶とは、平たくいえば、ヒトの血肉や感覚、感情、心情、有機体の持つありとあらゆる特性を度外視し、認知せず、あるいは認知する機能を反知性として排除し、そのように選択した知能(恣意)の成果だけに目的を特化した、空理空論の歴史(観念記憶の集積)の集大成、といえるのではないでしょうか。 では、生命と存在に有機的に係わることのない、生命を否定し存在を脅かす無機質の観念記憶とは、具体的に、どういうもなのでしょうか。
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