連還する記憶 ⑥

4/8
前へ
/32ページ
次へ
そして、そのような理想を抱いたヒトが、それを実現するために手段や手順を考え、その理想的な状態を目指し、理想郷が依って立つところの基本的なな考えや規範を、ゆるぎないものとして整えようとします。それが理念となります。 ヒトは、一人では生きていけません。 自分の周りには必ず他人がいて、それと共に助け合って、生きていくように生まれついています。なぜなら、他人との助け合いがなければ、ホモサピエンスは、とっくの昔に絶滅していたでしょう。わたしたちが、たった今生きていること自体が、その証なのです。 ヒトは、生きるために他人を助け、他人の助けをうけるために、互いの合意のもとに寄りそい集まって、集団をつくります。この集団を形成する過程で、自分たちにどのような集団が相応しいか、ということについて、ヒトはいろいろ考え、話し合います。 あなたが、これがいいと提案した理想像に対し、いや、この方がいい、と違った像を提案する他人は必ずいます。十人集まれば十の、百人集まれば百の、千人集まれば千の考え、理想的な集団像が、提案されることになります。 こうして、ヒトは、それらの理想像を一つ一つ突合せ、比較検討し、より広範で包括的な、提案者すべての考えを反映した理想像に統合しようと努め、やがて、みなが理想とする共同体像が出来上がると、それを実現し、維持し、持続するための意志や願望や決まり事、規範などを明確にした理念を構築します。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加