連還する記憶 ⑥

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集団と集団の間で、ヒトの致命的な対立が生じ、生命を否定し存在を脅かし、共同体の存立を否定、錯乱、破壊する事態が発生しても、各集団の理念を突合せ、検証し、すり合わせ、より広く包括的な理念を構築することで、新たな集団として統合・統一されていきます。 こうしてヒトは、長い殺戮と破壊の歴史の中で、生命を否定し存在を脅かし、共同体の存立を否定、錯乱、破壊する事態に直面し、驚き、悩み、考え、腐心し、頭を切り替え、知性を錬磨することにより、それらに対する免疫を獲得し、より広く包括的な統合・統一の理念の構築へと、辿りついていったのです。 それがなぜ可能であったのか。 理由は、明らかです。心、精神、知性、悟性、感覚、感性、有機体のもつありとあらゆる機能が、自由奔放に解放されていたからにほかなりません。自由な頭脳は、どのような事態に遭遇しても、自由に対応できます。なぜなら、知性の軸が無数にあるからです。ヒトは、いかようにでも、考えを変え適応することができる、多軸構造の頭脳に恵まれているのです。 <有機体の多軸構造> ヒトは本来、多軸の生き物です。ある伝統武術の口訣に、一動百動無有不動、という言説があります。 ヒトの身体は、どこか一つ動けば、それに応じて全身が動き、動かないところは一つもない、ということです。ヒトに六十兆の細胞があるとすれば、六十兆の軸があり、一つの動作に応じて、細胞の一つ一つが六十兆の軸を介して連動し合う、有機的な構造に仕上がっているということです。
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