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連還する記憶 ⑨
<種の怪>
生命誕生40億年、人類誕生700万年、以来、現在にいたるまで、どれだけの種が生成され絶滅してきたか、数多くの研究がなされています。とりわけ昨今、環境保護の観点から、絶滅危惧種のレッドリストを媒体に、ヒトによる環境破壊を主な原因とする言説が多く語られています。
絶滅に至らずとも、生成に不利な条件はいくつもあります。気候変動、捕食、生息環境の変容、地球温暖化、近親交配、外来種、等々、恣意的にCO2を戦犯扱いにする言説を除き、おおむね、ヒトがいくら泣こうが騒ごうが、人智のおよばない現象が介入することは否めません。
ところが、この種の環境問題の場合、ヒトの生存活動を主な原因とする傾向が強い。理由をいくつか挙げてみましょう。
ヒトによる収集やペット売買のための違法取引、ヒトによる森林破壊、密漁、繁殖地の開発、乱獲、水質汚染、生息地の開発・破壊、海洋開発・汚染、狩猟、森林開発、食肉用の捕獲、動物園利用、交通事故、農薬農薬、農業による餌減少、レジャー活動による妨害、大規模駆除、等々…。
せっかく生まれた種が、なぜ絶滅しなければならないのか? この種の生成と絶滅の奇々怪々の現象を、種の怪、と呼ぶことにします。なぜ怪なのか? なぜなら、多くの研究がなされているにもかかわらず、いまだ解明への確たるロードマップは提示されていないからです。
ここで、連還する記憶 ②で述べた生命記憶について復讐してみましょう。
生き物という有機体は、数十兆といわれる多くの細胞で、できています。そして、それぞれの細胞には、生類の誕生以来、蓄積継承してきた記憶があります。これを生命記憶と呼びます。
最近の研究で、細胞同士が、独自に情報を交換しあっていることが、わかってきました。細胞の一つ一つは、自分の記憶に刻まれた情報が、伝達媒体をとおして、ほかの細胞に伝えられ、自分たちが支えている生命体が壊れないように、作用しあうようにできています。
たとえば、ものを食べると、血糖値が上がりますが、上がりすぎると、生命体が壊れますので、膵臓からインスリンという物質を分泌し、骨格筋とか、脂肪組織などに、糖分を取り込むように働きかけて、血糖値を低下させるように作用します。
さて、ここで注目したいのは、細胞の一つ一つが、自分の記憶に刻まれた情報を、伝達媒体をとおして、ほかの細胞に伝えている、という最近の研究結果です。
この伝達媒体とはなんでしょうか? それがほかでもなく、微生物自身である、と仮説するのが本文の肝なのです。
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