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<環境とホルモン>
環境とホルモンの関係が久しく議論されています。ヒトの精神の健康、ひいてはその尋常な生存に深く関わってると考えられているからです。
一般に流布されている言説によれば、生活環境由来のストレスがヒトの精神健康に影響を及ぼし、心身ともに不調に陥いらせてしまう現象と説きます。そして環境を加害者、ヒトを被害者として、一方向の捉え方をします。
ヒトと環境は、この種の一方向の関係ではありません。ヒトは生命体として環境の一部を構成しており、環境に取り巻かれていると同時に、環境を取り巻いているからです。事実、良くも悪くもヒトは、その生成活動を通して、自然環境に影響を及ぼしているのです。
生態系全体からみれば、ヒトに限らず、あらゆる生命体と環境は相互に関与し、互いに依存し、継続して影響しあっているということができます。生命体も環境も、双方向の力、ストレス、が及ぼす影響の下に、共存しているのです。この相互影響の実態に深くかかわっているのがホルモンです。
<ホルモンの役割>
ホルモンは、体内にある特定の器官で合成・分泌され、血液など体液を通して体内を循環し、標的となる細胞で効果を発揮する生理活性物質です。
ホルモンが伝える情報は生体中の機能を発現させ、恒常性を維持するなど、生物の正常な状態を支え、都合よい状態にする重要な役割があるとされています。
生命体、特にヒトにつながる脊椎動物を例にとってみると、体外から体内に入る情報の中で、神経系に入る情報からは視床下部・下垂体・副腎髄質で、細胞の状態から入る情報からは性腺・副腎皮質・甲状腺濾胞細胞・心臓などで、また栄養に関わる情報からは消化管・膵臓・甲状腺濾胞傍細胞・副甲状腺などで、ホルモンが生成されます。
こうして体内に分泌されたホルモンは、体液を通じて適材適所に輸送されます。ホルモンが作用を発揮するには、その発揮場所ある標的器官(target organ)、実際に作用を発揮する標的細胞(target cell)があります。ここには、ホルモン分子に特異的に結合する蛋白質であるホルモン受容体(ホルモン・レセプター)が存在します。
この受容体がホルモンと結合することで、その器官でホルモンの作用が発揮されることになります。こうしてホルモンが伝える情報は、生体中の機能を発現させ、恒常性を維持するなど、生物の正常な状態を支え、都合よい状態にするための作用を発揮するのです。
<ホルモンと常在菌>
上述で確認されたように、ホルモンは、体内に入る情報を受けた分泌器官により生成され、その情報を標的器官と標的細胞に伝達し、生命体の尋常な状態を維持するように働きます。ホルモンは、生命体内を駆け巡る情報伝達物質なのです。
では、そもそも、ホルモン分泌器官に情報を伝達するものは何なのでしょうか?
前述のインスリンの分泌について想い起してください。食後に上昇する血糖値を抑え正常にもどすために膵臓からインスリンが分泌される生理作用ですが、
ここで血糖値が上がる現象を監視し、その情報をホルモン分泌器官に伝達する伝達者こそ、微生物の常在菌なのです。
<常在菌が働かなくなる条件>
「さいな、たとえばね、ヤマウサギ、おまっしゃろ」
「それが?」
「ウサギはね、多産動物でね、ほっとくと、なんぼでも増えまんねん」
「ええ、天敵がいなければ、ね」
「それがね、どんどん増えて、これ以上増えたら、どないなるんやろ、ちゅうときに、ヤマネコがね、どっかから、ちゃんと、現れるんですなあ、これが」
「生態系の、なんとか、ですね?」
「いや、モノ、ちゅうのはね、構造的に診ただけでは、なんも分かりまへんのや、ミクロですわ、ミクロを診んと、その奥が、見えてきまへん」
「というと?」
「種が、どうやって、生態系を維持してるか、ちゅう実態が、やね、露わになってきますのや」
「実態が?」
「ウサギが増えますな」
「ええ」
「ヤマネコが増えますな」
「ええ」
「両方とも、どんどん、増えますな」
「ええ、どんどん」
「ある極限に達するとね、ウサギの数が、少しずつ、減っていきまんねん」
「減っていく?」
「そう、少しづつ、ね、そして、二十匹生んでたメスがね、三匹しか生まんように、なりまんねん」
「二十匹が、たったの三匹に!」
「はいな」
「そのままじゃ、絶滅じゃないですか」
「ところが、ね、こんどは、ヤマネコの数が、少しづつ、減っていきますのや」
「ヤマネコが?」
「そうなんです、そうやって、ね、非捕食者が増えすぎると、捕食者が現れて、お互いに人口増加になると、お互いに、自制するんですな」、
「これ以上、増えんように、と?」
「はいな、そのとおり、ですわ、これがね、環境ストレスとホルモンの影響だ、ちゅうことが、最近、分かってきたんですな」
「ほー」
「環境から来るストレスが、ひとのホルモン分泌に圧力をかけ、母親の胎盤を通じて、生まれてくる胎児に人口を減らせ、という信号を送りこむわけ、ですな、そしたら、生まれてきた子は、オスでもメスでも、子供、生めまへんがな、こうしてね、種を、保存していくわけですな」
「でも、それって、捕食者と非捕食者間で発生するストレス、でしょう?」
「しかしね、ボン、ひとの種でも、おなじでっせ」
「同じ?」
「はいな、ひとと他の動物との間に、捕食関係、ありまっか?」
「ないでしょう、殺られても、ひとは、殺りかえしますから、むしろ、生態系の頂点にいる、と考えられるんじゃ、ないですか」
「まさに、ひとの業はね、殺ったら殺りかえす、そこに、ひとの絶滅と存続のカギが、あるんですな」
「殺し合いが?」
「集団同士で殺し合うと、どうしても強い集団、弱い集団が、出てきますやろ」
「当然です」
「強い集団は、弱い集団を駆逐して、もっと強くなろうと、しまんな」
「より、貪欲に」
「しかし、強くなりすぎると、なんぼ奴隷に子うませても、種自体が、生き残れなくなりますな、ボン」
「なるほど」
「すると、強い集団に、人口を減らせ、というストレスが働いて、胎盤を通じて、子孫に不妊するようホルモン調節がなされるわけ、ですわ」
「その結果、強い集団が縮小し、弱い集団が蘇生する、というわけ、ですか」
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