連還する記憶 ⑩

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<常在菌と種の絶滅> ヒト類のなかで、強い集団が増えすぎると、その人口を減らせというストレスが働き、常在菌の働きでホルモンが生成され、それが胎盤を通じて子孫に不妊の信号を送ります。その結果、強い集団は縮小し、弱い集団の規模が増大し、こうして、ヒト類は存続しつづけることができるのです。 ところが、ある集団の生成力が、その常在菌の分布特性が対応しきれなくなるほど勢いづき、ほかの集団の生成をはなはだしく阻害するような事態になると、常在菌の挙動は一気に変貌します。 自分以外の集団を喰い尽くすほど勢いのある最強集団に寄宿する常在菌は、ヒト類全体の種を保存するため、その人口を減らすホルモンの生成を促し、胎盤を通じて子孫に不妊するよう信号が送られます。この際、最強集団に寄宿する常在菌は、ヒト類全体の種を保存するために、かつ、自らの存続を期してほかの宿主にのりかえるべく、現在の宿主たる最強集団から離脱しはじめます。 その結果は明らかです。最強集団は子孫を残すことなく絶滅し、危機を乗り越えたヒト類の他の種は、絶滅を逃れ存続しつづけることになります。 種の怪の絶滅編です。 ヒト類誕生700万年、どれだけのヒト種が絶滅していったでしょうか。考古学、地質学、自然人類学、等々、様々な分野で種の怪に掛かる専門研究がなされています。 いまだ多くの謎に包まれていますが、われわれヒト類の数多くある種のなかで、常在菌離脱による絶滅という運命を余儀なくされる種の集団が、今後、出てこないとも限りません。その不幸な当事者とならないように、生きとし生けるものすべての生態系に、持続的かつ柔軟な関心を持ち続けること、それが、生態系の一部を構成するわたしたちヒトにとって、とても大切なことではないでしょうか。(完)
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