2章 戦学《せんがく》科

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2章 戦学《せんがく》科

1 ユリア学園長から話があってからものの三ヶ月で学級の組み替えが終わった。 結局、戦学(せんがく)科という新たな名称で設立された級で、私とリオン講師が担当を任された戦学科の生徒は五人だった。 これから、戦に携わる全てを教えることになる。 正直、気が重い。 とはいえ、アクアリウム大陸の戦犯は帝都を落とそうとする東の軍勢と西の軍勢。北の軍勢がその勝ったほうを負けた軍勢ともう一度襲うだろうと予測されている。そうして勝ち上がった軍勢が負けた軍勢を取り入って、帝都を潰しに掛かる。まず、その段階が今の情勢で、南側はまだ静観と中立を維持している。 生徒の名簿を渡されたときアレクの名前があって驚いた。 もともと私が担当していた衛生科の生徒だ。 精霊事件のあとは記憶を操作されて大人しくしていた印象が強かっただけに意表をつかれた。 志望動機を訊ねると、意外な言葉が返ってくる。 「実家が軍師ライア・ウルフの子孫なんです。僕はその十代目にあたります。魔術専門校の計略科なら将来役立つと聞いています」 確かに魔術専門校の計略科ではなもなき世界の先人たちが残した戦の知恵を事細かに伝えている。 計略専門の講師ルック・ミネルバは一ヶ月前に子供ができたといって休みを宣言し、実家に帰った。当分来ないことは確かで、その担当はリオン講師が引き継いでいる。戻って来る頃には、学園の存続すらわからないので実質退職扱いになった。目まぐるしすぎる学園の内情にユリア学園長までもが教壇に立つという異常事態だ。ユリア学園長の副担は教頭の蒼髪(あおがみ)だった。ちなみに、教頭は皆にそう呼ばれている。もちろんあだ名だ。年は最年長の七十だったが動き廻っている姿は五十代といわれても良いような容姿をしていた。生徒にも懐かれていて、個人面談をさくさくとこなして今の学級を割り当てた。蒼髪の理由は、魔術で染めた髪が妙に似合っていることから来てるそうだ。蒼髪は、学園が始まってからずっと教頭というポジションについてる。そのため講師陣のまとめ役もしている。戦術科のセフラム講師がいない今となっては、蒼髪と二番目に長いロイス・パレード講師が頼りだった。ロイス講師は現在、総合魔術科と名付けられた級で講師を勤めている。 「アテナ講師が計略にも精通しているなんて思ってもみませんでした」 授業の終わりにアレクがいった。 「私よりも、リオン講師が詳しいんですよ。私は補佐的な立場なんです」 「そんなことありませんよ。捕縛術を使用した計略は教科書にありませんでした」 「独自の計略ですから成功例は少ないですけれどもね」 「いえ、使い方がわかれば良いんです。それに僕なりのアレンジを加えて使います」 そんな会話が終わるか終わらないかのうちに、教室はからになった。 結局、ユリア学園長の話があったあと、何度も職員会議が行われて、総合魔術科、特進学級、戦学(せんがく)科、衛生科の四つに組分けで話が纏まった。
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