1章 魔術専門校

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「そうですね。私たち育てる側の辛いところです。生徒たちに納得のいくよう説明はしてみますが何人残るかまではわかりません。それでも、戦で成り立つ世の中です。遅かれ早かれ要請は届きます。真っ当な職につく生徒も、いずれは駆り出されることでしょう」 「戦がなければ発展もしない。神はなぜこんな世界を作ったのでしょう?」 「愚問ですね。神が魔術というものを人間に与えた時点で悪意を覚えます。そうして、知恵をもたらした時点で全ては始まってしまったと、聖書にはありますけれど、確かめる術がありません」 「神に悪意を覚える時点で世界が悪に染まったとも聖書にはあります。本当に嫌な世界です」 私は、ふいに息を吐く。 名もない世界と言われる場所で、私とユリア学園長の会話は暇潰しでしかなかった。もちろんそこに正解はない。おそらく一生賭けても答えは出てこない。この世界を創った神様にしかわからないことが山ほどある。 私はそんな世界が大嫌いだ。 ユリア学園長が続けた。 「ともかく、決定事項です。リオン講師が戻り次第、全階級に通達を送ります」 「学園長。私に出きると思いますか?」 私には自信がない。 軍師も軍医も育てられるだろうか。 元王妃の出で、修行は積んだものの、医術と捕縛術を専門としただけであって教師としてはまだまだ駆け出しだった。 「私もサポートします。生徒への個人面談を教頭先生に任せてそれなりの意思を持った生徒を配置します。それからリオン講師が帰るまでこのことは内密にお願いします」 ユリア学園長は静かにそういった。 私は頷く。 というよりも、肯定も否定もできなかった。 心のどこかで生徒本人がこの位置代えを否定し、引き受けないこと、学園にとどまらないことを祈るだけだった。 その上、ユリア学園長からの秘密という契約。 この学園の裏側を知れば知るほど頭がいたくなってくる。 魔術専門学校は先程述べた通り、国の援助でなりたっている。 そのため、私が受け持つ生徒たちの殆どが軍隊志望というから辛い。 卒業後に、国へ帰り、出兵するということが名誉であり、戦死しても国から補助金が振り込まれる。 私はそんな世界が大嫌いだ。 人殺しの私が言ったところでなんの意味もないかもしれないけれど神が創ったらしいこの世界は余りにも残酷な現実で溢れている。 けれども、人はそれを普通という。 おかしいなどとは言わない。 毎日、どこかで愛しい人が死んでいく。 それが名もなき世界の現実だった。
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