2章 戦学《せんがく》科

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一体、アクアリウム大陸を牛耳ることになんの魅力を感じているのだろう。 私には出世意欲がないので理解ができなかった。 「アテネ講師。ここ、いいですか?」 思いすぎが呼んだのかリオン講師が夕食をもって現れた。 席はどこでもいいような気がした。 「どうぞ」 「ありがとうございます。嫌いなメニューでもあったんですか。深刻な顔をしてましたよ?」 席に着くなりそんなことを聞かれて私は掴んでいたスプーンを皿に置いた。 「別になにも。授業でやることを考えていただけですよ」 「次は、戦の始まりでしたか。歴史は変わるので大変ですよね」 「それもですが、戦時代のど真ん中で歴史を語るというのも難しいことです。間違えないようにしないと」 「歴史は変わりますよ。あまり真剣にならないほうがいい」 リオン講師は私と同年代には見えないほど童顔だった。無邪気さを残したまま歳だけ取った印象がある。 「そこが難しいところです。そういえば、あの精霊は実験場で大人しくしているのでしょうか?」 私は食事を続けて、リオン講師に訊ねた。 「さて、どうでしょうか。引き渡すまでに暴れられて仕方なく、尻尾を切り落としてやったんですが怨みの波動みたいなものを始終感じましたよ」 「あらあら、それは大変でしたね。あちらの職員はなんと言っていました?」 「復活させたことに感謝されました。研究が(はかど)るととても喜んでいましたよ」 「そうなんですね。それにしても禁忌領域(エリア)から精霊を復活させるなんて。一体、どちらで習った魔術ですか?」 「呪い、契約、封印、復活や解除を専門にした一族が東側にいるんですよ。十代の時に縁がああってそこで習ったんです。教職に就くにはいろいろな試験を突破しないといけないので苦労しましたよ。アテナ講師の時はどのような内容でした?」 リオン講師は持ってきたサラダを食べ尽くして、チーズを口に入れた。 「試験内容は個別ですからね。条件が大幅に違うのがアクアリウム大陸の法則(ルール)。私はたまたま得意分野で募集していたからここにいるだけかもしれませんね」 「生きていくために職業は必要ですからね。盗賊ですら立派な職務です。あ、今期の試験なのですが筆記の範囲をもう少し広げるつもりでいるんです」 「そうですね。計画より実は授業の進みが遅いと感じていたところです」 「実直が、二週間後、試験が今月末です。卒業まで四年とはいえあまりにもスケジュールが押している」 「急にいろいろ変えたものだから他の講師陣も対応に追われてますしね。家庭への連絡も戦の影響で滞っていると言います。なかなか改革は難しいですね」
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