2章 戦学《せんがく》科

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帝の兄弟は、分かっているだけで十人はいる。そのうち帝が具体的に把握しているのが、五人だった。 五人の兄弟は全部男というから、転がり込んだ即位の権限を見逃すはずもない。 帝が現役引退を決めて数日で、次男と三男の領土の取り合いが始まった。 最初は、軍隊同士のぶつかり合いで、人民に被害がでないように注意を払っていたが、誰が入れ知恵したのか減った兵士を補充するように法律を作った。 法務省の一存で、学生及び悪人を戦に起用することをアクアリウム大陸全土に広げてしまった。 出兵する生徒を無理矢理送り出すことで学園に資金や物資が回ってくる。 考えるだけでも狂った法律だった。 年齢は十五歳以上というからどれだけ使える兵士が居ないのだろうと悲しくなる。 講師陣まで戦に駆り出して得る富みに魅力は無さそうだった。 民からの不満も爆発している。 民の反逆を防ぐため、軍隊が動くことで争いは激化していた。 帝の兄弟たちも、帝都を狙うにはそれなりの計画がないと動けないのだろう。 他国を支配し、軍兵を増やして闘おうとしているようだ。 そうして、帝都を手に入れたあかつきには、新たな歴史を作ろうと必死だった。 現在、優位に物事を進めているのが三男だった。 名前はクオリネというらしいけれど、ややこしいので三男と呼んでいる。 その三男は商人の腕もあるようで、物資や兵糧を運ぶ経路を使い、軍隊をうまく率いている。 五男が、三男の兵糧を奪った戦闘は有名で、関係を悪化させた出来事として有名だった。 三男は五男を籠城に追い詰めた。だが、五男も頭の回転が早い人で、城を焼いて自分たちは地下通路から逃げ出している。 現在、三男は五男を探しだそうとしている。それでも長男に一番近いのは三男だとアクアリウム大陸では伝わっている。 揺るぎない三男無双のなかで、残りの兄弟たちは各地で小競合いをしている。 民たちは息をのみ、巻き込まれぬよう生活をしている。 男たちは気配を消し、女たちも極力存在を消している。 アクアリウム大陸での生活は辛いだけだった。
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