2章 戦学《せんがく》科

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4 魔術専門校では、将来、帝都で職に就けるように訓練している。受け入れられる子供たちは、孤児であったり、裕福な家系の子供であったりと格差が激しい。 学費や生活費のほとんどは、国からの援助で賄われていることは前にも言ったと思う。 敷地の管理費までもが、東西南北の国から提供されているので、言ってしまえば、出兵依頼さえ来なければ平和な領域(ばしょ)だった。 世の中が戦乱でなければ、生徒たちは、無事に卒業し、それぞれの得意分野で生きていけたはずだった。 しかし、数年前からそれもかなわなくなり、現在では学校の存続さえ危ぶまれている。 国々が、戦に継ぐ戦のせいもあって、学校への援助が辛くなっているそうだ。 そこで悪どい国の参謀は、生徒の出兵をすれば援助資金を増やすことを提案してきたらしい。 悪どいというより、姑息で安易だと私は思う。 知識と経験と実力は比例しない。 最初から軍事として育てているわけではない。 魔術専門校の真髄はあくまでも魔術を使いこなして生きていける最低限の教育をすることだと言われている。 生徒たちはその目標が定まらないうちに徴兵される。 そこそこ実力を持っている生徒であれば、戦を乗り切ることもできるだろけれど、大半が満身創痍の上、確実に闇を抱えて生きて行くことになる。 私が、生徒ならきっと、戦で死ぬというより、深い深淵の闇に呑まれて死ぬと思う。 夫を殺した私が言うのも変な話だけれど。
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