2章 戦学《せんがく》科

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私は、戦学(せんがく)科で教える内容をまとめようと職員室に詰めている。 教員室に残っている講師の数は、六人まで減っていてそのうち保険医と事務員を引けばたったの四人だけだ。 今日は、実技で丸一日を使うためにリオン講師の姿はない。 他の二人の講師も個別の授業で午後まで帰って来ない。 本来なら数名の教師とやり取りをしながら教育内容を決めていく流れなのだけれど、産休だったり、徴兵されたり、逃げ出したりしているのでそんな取り決めは無用の長物だった。 ユリア学園長もまた、教頭の蒼髪と協力のもと国からの支援を勝ち取ろうと奔走している。また、二人は月に三度は、私たちを休ませる為に自ら教壇に上がることを約束してくれている。 魔術専門校の台所事情はとにもかくにも火の車だった。 明日には別の学園と統合するのではないかと噂さえ出始めた。 けれどもそれも仕方がないこと。 生徒も講師も居ない状態では早めの統一が望ましい。 といって、全てがうまく運ぶとは思っていない。 何かしら要らない条件をつけてくるのがアクアリウム大陸であって、名もなき世界なのだ。 神がなぜそんな世界を作ってしまったのかは、誰も知らない。 倫理、宗教などを専門とする学科はあるけれど、数年に一度は全てをひっくり返すような論文が出回り、信憑性を検証するには時間がかかったていた。 つまりは、全てが机上の空論。 中には存在を消された神まで存在するという分家もあるくらいで、証拠はどこにもない。 どこにもない真実というのが真実だというのに、他に真実を求めるのは人としての好奇心からなんだろうか。 だいたい、「無」に関して論文で纏めろというお題を出されたら私はなんと答えるだろう。 まさか、全てを皮肉って白紙で出すわけにもいかないだろうし。 ないものは、ない。 と、どこかの誰かの言葉を書きなぐるわけにもいかない。 生徒にお題を出してみようか。 なんだかとても気になる答えがありそうだ。
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