2章 戦学《せんがく》科

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普遍的な見た目のままの教科書の頁数は、歴史、文学、地学など教科によって異なる。 魔術専門校で扱っている教科は、七十七もある。 総合学科専門校ともなれば、百を越えて、生徒数も教員数も計り知れない。 支援も魔術専門校以上のものとなる。 何より、帝が絡んでいる。 至れり尽くせりの環境に、知識や技術を持ち合わせた教員が生徒を育てているという。 羨ましいとは思っても私にできることは限られている。 もし、職員会議で総合学科専門校との統一が決まったとなれば環境はガラリと変わる。 時間がくるまでもう少し時間があった。 5 「アテナ講師、ちょっと良いですか?」 リオン講師が職員室に入ってきたのは、職員会議の連絡を受けてすぐの事でした。 今日は一日居ないと思っていたので驚きましたが、リオン講師が隣の席に座って紙を渡してくるので、受けとった。 紙には、野外授業の評価書かれていた。 「はい、これが何か?」 野外授業の評価を眺めて見たものリオン講師の渋い表情の意味は分からなかった。 「良くできた生徒って怖いですよね」 「喜ぶべきことでは?」 渋い表情のまま指差した先にアカシアの名前がある。 紙に書かれた評価は、0。 魔術専門校において最高得点だった。 ちなみに最下位は、9。 「野外授業でかくれんぼをしたんですよ。最早、神レベルの慎重さと技術で乗りきられましたよ」 リオン講師が力なく笑った。 「いやね、俺も色々な生徒と遊んで来ましたけど、時間を過ぎても見つけられなかったのは彼女だけです。隠れかたが斬新で日々進化してるのだと思うと時の流れに残される自分がなんだか情けなくなって」 「一体、どのような隠れかたをしたんですか」 私は、いまいち想像がつかずに訊ねました。 リオン講師が背凭れに体重を預けて答える。 「他の生徒と一緒に隠れていて俺の気配を感じたら自分だけ先に逃げていたみたいです。その上、最後はどこにいたと思いますか?」 「ええと、確か場所は西にあるコルクの森ですよね。隠れるところはたくさんあると思うのですが」 私もかくれんぼは得意ではありません。 残念ながら想像が追い付きませんでした。 「俺が数を数えていた幹の反対側にへばりついてたんですよ。幹と同じ模様の布を被って」 「まあ、気配もなく?」 「気配もなく、俺が近寄る度に幹をぐるぐるまわってたんです。回りも見て見ぬふりだったので時間までに見つけられず」 「そうなんですね。アカシアさんは、そういった知識を実践で活すことが得意なんですよ」 「俺は長年講師としてやってて初めてです」 「長年?」 「俺、アテナ講師より年齢上ですよ」 「え、一体、おいくつ何ですか?」 「内緒です」 「あの、解釈違いならごめんなさい。講師歴が長いという意味ですよね?」 「それもありますけれど、俺のほうが年上です」 にわかには信じられずに私はリオン講師の方へ意識を向けていた。
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