2章 戦学《せんがく》科

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「あ、余計なことを言ってしまったみたいですね。気にしないでください。話も脱線してしまいました。話を戻すと、アカシアの評価を改竄しますというお知らせに来たんですよ。パーフェクトを出すと徴兵の対象になる恐れがあるのでそのことを」 リオン講師が、紙を示した。 話をそらされたことで、私は内心苦笑いましたが生徒の話は別でした。 「それは、一理ありますね。しかしなぜ私にそんな話を持ちかけてくるのですか?」 「話はあわせてなんぼです。それに職員会議の話は聞いてますよね。さっき教頭が保険医と話していたんです。総合学園セントラルとの合同授業を」 「合同授業ですって? しかも、セントラルと?」 「徴兵率約九十パーセント。ほぼ徴兵されていく流れになります。ま、詳しくは職員会議でユリア学園長が教えてくれるはずですがね。生徒の評価をいじっておくほうが徴兵の時間稼ぎに出きるかなと思ったので」 リオン講師が真面目に言うので私は目線を反らした。 「考えが追い付きませんが、アカシアのことはわかりました。宜しくお願いいたします」 リオン講師の言うことは理解している。 生徒の希望を無視してまで徴兵されるということが私には苦痛だった。 何も、人殺しの天才を作るつもりはない。 生き残る方法を教え、育てたいという自分自身の指針は変えたくなかった。 けれども、闘争本能の強い生徒はどこにでもいる。 自ら志願して飛び出していく生徒もいる。 戦の世の中なので仕方ないと言う大人が狂っているのか、そんな世の中に寄り添いたくないと思っている自分がおかしいのか時々、悩んでいる。 「アテネ講師。俺はね。戦のやり方を変えて欲しいんですよ。一般人を巻き込んでまでやるようなことではないと思っているんです」 「戦のやり方はたくさんあります。規則だってあるんです。けれど、そんなことを無視して動く参謀や軍師の策略が発展しているんです。正々堂々と行われている戦など数えるほどです」 「そうなんですよ。改革だのなんだのと騒いで、長年のやり方を変えようと先人を追い払って。残った奴らで頭を付き合わせていていても部下や協力者が居なければ意味がないんです。最悪、兵士全員に逃亡させるくらいの改革じゃないと戦はなくならないでしょうね。まあ、憶測言っても始まらない。職員会議まで黙って寝てます」 リオン講師はそうとだけ言って職員室から出ていった。 残された私は、仕事を終わらせる。
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