2章 戦学《せんがく》科

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自分の生徒たちを思い浮かべる。 たった五人の生徒だけれど、彼らには彼らの夢があることを私は知っている。 戦が激しくなる少し前、私は生徒たちに作文を、いや、目標を書かせた。 妙に細かく書いた生徒も居れば、短く目標のように書いた生徒もいた。 アカシアの実家は、激戦区であり、いつ徴兵されるかもしれない場所にある。 時折、アカシアに届けられる手紙が徴兵要請ではないことを祈っている。 アカシアが提出した課題にはその内容が事細かく記されていた。 私はその文章に遺書のような雰囲気を覚えていた。 ただ、アカシアには何も言っていない。 生徒の本心を無理矢理聴くことに抵抗があったからだ。 そうでなくとも課題に書いたことが、アカシアの本心だと思えるような文章だった。 私には突き刺さっている。 私は、戦が嫌い。できれば、そんなものに参加はしたくない。だって、怖いから。徴兵がきても生き抜く術を学びたい。その上で、できるなら戦えない人々を出きる限り逃がせるようにしたい。無理だとわかっているけれど、私はまだ死にたくない。それでも死ぬときは相手も道連れにする覚悟を育てたい。これがこの戦学科で学べたらと思っています。 アカシア・ツバキ。 最後の文字が震えている。 自分の名前を書いているはずなのにインクがやたらと滲んでいて、アカシアの持っている何かしらの感情が乗り移ったのだと私は思いました。 リオン講師に読ませた記憶はありません。 リオン講師は、リオン講師の意志で改竄を申し出たのでしょう。 私は、溜め息混じりに職員室にから出ました。 これから夕飯でです。 戦の世の中楽しみは限られていました。
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