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魔術専門校三級戦術科を担当しているセフラム先生とユリア学園長の会話を聞いてしまった。
要予すると、卒業生の変わりに戦に参加してほしいということらしい。
ユリア学園長としてもこのまま生徒を見殺しにはしたくないようだった。
セフラム先生は、一瞬、いい淀んだものの直ぐに要件を飲んで旅立ってしまった。
その数日後には、臨時講師が就任している。
いつか、私にも回ってくることとはいえ、使い捨ての感が否めない。
ある日の放課後、臨時教師のリオンとアレクが裏庭で動物のような存在を追い回しているのを見かけた。
声をかけるつもりはなかったが、追い駆け廻されている生物が私のほうへと突撃してきたので咄嗟に、捕縛術のひとつを発動させた。
捕縛術の規則は植物の蔦だ。
地面から伸びた蔦が蜘蛛の巣を作り、生物を捕らえる。
「お見事、凄いね。アテネ講師」
臨時講師のリオンが手を叩く。
「なんですか、この生物は」
蜘蛛の巣に絡まった二又の黒猫を示して聞く。
「なもなき世界に作られた精霊です」
答えてくれたのはアレクだった。
アレクの隣ではリオン講師が頷いている。
「精霊ですか、神が使役しているという生物がなぜここにいるのですか?」
「一日に一度だけ、魔術専門校に張られた防御結界が緩んでいる時間があるんです。そこから入り込んでしまったんです」
私はいつもは口数が少ないアレクが喋っていることに驚いてしまった。
「アテネ講師。この精霊と契約したいんで、俺に手解き願えませんか」
リオン講師がいきなり言った。
蜘蛛の巣に絡まった黒い毛皮の猫は蒼い瞳を開いて唸る。
「嫌みたいですよ?」
「精霊ですよ。この機会を逃したら二度とないかもしれませんよ?」
リオン講師の口調は愉しげだった。
精霊と契約するということは、精霊の力を扱えるということだ。
「神が使役している精霊がこんな場所に居ること事態大事件なのですが」
「アテネ講師。僕も見てみたいです。本当に契約できるんですか?」
アレクがリオン講師に便乗するように目を輝かせた。
「簡単にいわないでください。私には契約術の基礎しか扱えません。失敗したらこの生物いえ、精霊に全て奪われてしまうのですよ」
精霊と契約することがどんなに危険なことか説明する。
死ぬだけではすまない上に、国も消える可能性がある。
契約術に関しては余りにも禁忌要素が多かった。
「知ってます。けれど、その儀式を見てみたいんです」
アレクが熱心に詰め寄ってくる。
蜘蛛の巣に絡まった精霊がふっと息を吐いた。
「そんなに契約したいなら、お前の身体をオレにくれ」
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