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「ところが、私は兵士上がりの魔術師でしてね。学園を仕切ることしかできません。リオン講師は封印補佐も得意ではないようです。アテナ講師は、治癒と捕縛術専門ですよね。知識だけでは封印はできませんし、何より学園のためにならないんです」
ユリア学園長が左手で空気を叩いた。
青い光から飛び出したのは蛇だった。
「この子は、精霊を丸のみにできます」
蛇が大口を開けたので、私は咄嗟に二又の尻尾を持つ猫をそちらに向けていた。
「おいっ。話を聞いてくれ。昔はオレの力がほしいとこぞって群がってきた人間がなんだって千年でこんなに進化するんだよ。それに、だ。兵士が魔術師だなんて聞いたこともない」
精霊が喚く。
焦りを感じているのか、言葉が早い。
「人間は日々知識を増やして前に進んでいるのです。蛇が嫌ならこちらはいかがですか。目が覚めたら実験場ですよ」
蛇がランタンに変わると光を灯す場所から蔦が延びてきて二又の尻尾を持つ精霊を引きずり込んだ。
学園長室が静かになる。
まったく、うむを言わさない。
ユリア学園長は帝都の軍隊から左遷されて魔術専門学園を任された。
兵士だと口にしたが、履歴を見れば魔術師家系の一人だと言うから魔術に関しての素質は十分なものだった。
「リオン講師。東の島アスタリスクのセレン博士にこのランタンを届けてきていただけますか」
ユリア学園長がランタンをリオン講師に渡す。
リオン講師は、肯定も否定もせずランタンを受け取った。
「これって、新任教師テスト採点に関わってますか?」
「採点ですか、リオン講師も気になっているとは知りませんでした。ギリギリの点数といったところでしょうか。精霊を殺せれば満点だったのですけれど」
ユリア学園長に言われてリオン講師は笑った。
「それなら、わかりました。ちょっといってきます」
リオン講師が学園長室を出ていくとユリア学園長は、黙ったままのアレクに近寄っていった。
アレクの頭に掌をのせると幻影魔術で記憶を操作してしまう。
きょとんとしたアレクにユリア学園長が言う。
「テストのカンニングはなかったようです。貴方を貶めようとしている生徒は退学処分にしましたのでもう、苦しめられることはありませんよ。嫌な思いをさせてごめんなさいね」
アレクは疑問符を飛ばしていたものの、何事か納得したように頷いて、挨拶を済ませると学園長室を出ていってしまった。
ユリア学園長と二人きりになるというのもあまり好きではなかったので、私も早々に学園長室を出ようとした。
「待ってください。お話があります」
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