1章 魔術専門校

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ユリア学園長に呼び止められて、私は振り返った。 「はい、なんでしょうか」 「ここからは、業務のお話です」 「業務?」 「リオン講師のことです。彼は帝の八番目のご兄弟です。先程、講師の新任試験を経て合格が決まりました。彼には計略科の生徒をみてもらうつもりでいます。そこで、アテナ講師に副担任として就いてもらいたいのです」 「それでは、私が受け持っている二級の衛生科は誰が引き継ぐのですか?」 「そちらは、四級の戦術科のクオリア講師に任せます。それから、二級と一級は統合が決まりました。三級が、これからは二級となります。四級が三級と繰り上がります」 いきなりすぎる配置代えに私は思わず顔をひきつらせた。 魔術専門校には、四つの教室と特進学級がある。一級は、魔術総合。二級が私が任されていた衛生科。三級がセフラム講師とクオリア講師が担当している戦術科、四級が計略科。特進学級は、四名しかおらず、その四名は、特進というだけあって、その素性を表に出さないことになっている。特進学級の生徒は帝に使えることとなる。いわゆる出世街道だった。 「それにしても卒業や入学の編成改訂とも違いますね。どう言うことです?」 「それだけ、生徒が減ってしまったのです。それなのに各国から要請は多くなるばかりです。この辺で要請放棄をしないと学園事態が存続不可能になる危険性があります」 「戦術科のクオリア講師は、セフラム講師と行動されていましたよね」 「ええ、副担任のセフラム講師は戦場へ。自分の実家が戦の指揮をとっているとのことで出向かざるをえなかったのです」 「なぜ私をリオン講師と計略科に?」 「軍師と衛生医を育ててもらうためです」 「それは、戦に送り出すことが前提ですか? しかも、帝の兄弟って」 私は告げられたことに対してすこしばかり困惑していた。 だいたい、帝の兄弟が魔術専門校の講師として就職など聞いたこともない。 それとも、血筋を引いただけで下級階層に生ませたのだろうか。 アクアリウム大陸だけの話だろうけれど、不貞行為が結構多く、不倫は普通の光景だった。 驚くことはといえば、そんな境遇の人間が帝都より東南の位置にある魔術専門校の講師に就任したことだった。 「リオン講師の背景は内密にお願いします。アテナ講師ならうまくやれると思っています」 「私は、生徒を闘うだけの機械には育てられませんよ」 「治癒術と捕縛術は防御にも攻撃にも必要なんですよ」 「わかっています。けれども、それで戦を渡るには余程の技術と覚悟が必要です」
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