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この世界は『乙女ゲーム』の世界で、ヒロインが空から降って来ることから始まる。
この世界に現れたヒロインは次々とその聖なる力で怪我人や病人をまたたく間に治癒し、王国の危機を救い国民の信望を集め王国教会の庇護下に置かれる。
その後王太子殿下を始め彼の側近や高位の貴族の子息達に見初められて、ヒーロー毎のルートでハッピーエンドを迎える、若しくは逆ハーウハウハエンドを迎えるという世界らしい。
勿論バッドエンドもあるらしいが・・・
当然この世界に転移してきた【聖女】ことエミ・マキハラの脳内にはバッドエンドは存在しない。
脳内に在中しているのは各悪役令嬢をざまあして、王太子妃、宰相の妻、騎士団長の妻、魔術師長の夫人エトセトラエトセトラ・・・・ になる、若しくはハーレムエンドのみであった。
いや、あんな簡単なゲームでバッドエンドなんぞ有り得んから知るわけ無いだろ?! というのが彼女の言い分なのだろうが。
公式サイトではそれらしき情報は流れていたが、そんなものには目を通していない為モチのロンで割愛である。
明日王城に出向き王立学園に通い第1王子をはじめ、彼の周りのイケメン攻略対象に出会うことによってめくるめく愛欲の世界(R18)に羽ばたく事に余念のないエミは、教会で与えられた部屋の中で鏡の前に座り、自慢のロングヘアーを櫛っている。
「この国じゃ、黒髪は珍しいから【神秘的】だって皆から褒められるのよねえ~」
そして其の褒め言葉に嫉妬した彼ら攻略対象の婚約者達がヒロインをよって集って貶めるのだ。
でもエミはそんな事はされたくない。
ついでに云うなら、命がけで魔獣狩りや瘴気の沼の浄化なんかしたくもない。
それを回避したくて教会の保護下に置かれたときに、何処に魔獣が現れるのか、瘴気の沼が発生する場所はこの辺りだとかを神父に洗い浚い喋ったのである。
早々に悪役令嬢たちが今後自分にするであろうイジメや陰湿な嫌がらせもつい話してしまったが、些細な事だと笑われて若干ムッとした。
エミはちょっと頭が足りないのだろうか?
多分。ウン。きっとそうである。
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