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 さて。翌日朝から良い天気に恵まれて抜けるように青い空の下、王宮から迎えに寄越された慎ましやかなの黒塗りの馬車に乗り、王城ヘと向うエミである。  美しいスチル通りの白亜の城を窓から眺め、目を細めながらほくそ笑むその姿は誰もいないから良いが、どう見たって本人が悪役令嬢である。――日本の中小企業に務めるサラリーマンの父とパート勤めの母の間に生まれた彼女が令嬢に当てはまるか否かはこの際置いといて、ではあるが。  王城に着くと、そのまま侍従に連れられて謁見室に連れて行かれるエミ。  廊下は赤いカーペットが敷き詰められていて、足音はあまりしない・・・筈なのだが、何故か彼女の靴音がパタパタと聞こえる。  踵を踏んだ運動靴だからである。  因みに服は某女子高のセーラー服でスカート丈は超短い。●ーロッパ的には超アウト! だが、乙女ゲームでの異世界人ヒロイン的には合格である。  尤も、侍従は●ーロッパ人なので当然エミに【破廉恥】の烙印を頭の中で押している。  顔に全く出さないのは流石王宮勤めの侍従だ。  警備兵や侍女達も素知らぬ顔で会釈をして廊下ですれ違うが、全員が侍従の脳内とほぼ同様。  揃い踏みで右へ倣えである。  ただ一人ヒロインであるエミだけが3次元マティアス王子に会えることにワクワクしているのだった。  黒い御仕着せを着た侍従に連れていかれた場所は、とてもじゃ無いがエミには開けられない様な巨大な両開きのドアの前。  両脇には警備のための兵士が2人立っており侍従の合図でドアが自然に『ギギギ』という音をさせながら内側へと開いていく。  目の前に広がっているのは綺羅びやかなシャンデリアが天井から吊り下がり、赤いフカフカの絨毯が敷き詰めてある広い部屋だった。  エミの目の先、部屋の奥に3段位の階段が付いたステージのようになった雛壇があり、立派な装飾の施された大きな椅子が2脚置かれていた。  その豪華絢爛の椅子に金色の王冠をかぶった金色の髭を生やした国王と、椅子が若干余り気味なんじゃね? というくらいスレンダーな美魔女が座っている。  彼女は王妃であり、国王より少しだけ小ぶりの金色のコロネットを被っていた。
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