1/1
前へ
/8ページ
次へ

 ふと視線を動かすと、王妃の斜め横に3次元仕様のメインヒーローであるマティアス王子が立っているのが目に入り余りのイケメン度合いに思わず目を見開くエミ。  シャンデリアの光を受けて更に輝くようなプラチナブロンド。  襟足は短かく切り詰められており、前髪だけが長めで後ろに自然な形に流されている。  碧色のくっきりとした二重まぶたの瞳は見事な左右対称を成しており、鼻筋はスッと通っていて鼻梁も申し分ない高さである。  男らしさを思わず意識させるようなシャープな顎のラインは父親の国王、見るものをうっとりさせるような甘いマスクは母親の王妃譲りだろうと思われる。  背の高さはどう見積もっても190センチ近くあるし、足の長さは流石の西洋仕様で、モデル並みに滅茶苦茶長いっ!  そう、マティアスは2次元オタクをも唸らせるような理想の『The・王子様』であった。  エミが心の中で小躍りしたのは言うまでもない・・・  が。  その横には豪華な金色の髪をハーフアップにまとめた、まるで天使のような姿の女性が立っている。  『悪役令嬢・ジュリア』である。  彼女は王子の瞳と同じ色味の布に銀糸の刺繍が入った豪華なドレスを身に纏い、頭頂部には小振りな銀色の王冠(コロネット)を載せている。  おまけにマティアスがその腰にガッツリ手を添え、まるで一時たりとも離すものかと言わんばかりに思いっ切り囲い込んでいる。  『ちょっと待ってよ、何で悪役令嬢がここに居るのよ?』  思わず眉を顰めてしまうエミ。  その顔を見て思わず侍従が小声で注意した。  「王族に対して不敬ですよ。頭を下げて下さい」  更にムッとした顔になったが、速攻で侍従に頭を鷲掴みにされ、渋々頭を下げたのであった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加