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2 これが恋愛イベントというものですか
下校時、金髪で柔らかな物腰の先輩が声をかけてきました。
入学式で在校生代表の挨拶していたセシリオ様です。
庶民の私が王子様とばったり遭遇なんて、神様に仕組まれていない限りないですよね。
「やぁ君、たしか魔力があるから編入してきたっていうアラセリスだよね。入学式で会長に呼ばれていた」
「は、はい。そうです、セシリオ様」
「会長と何を話したのかな。意地悪されてないかい? 困ったらいつでもわたしに頼るんだよ。女性を助けるのは男の義務だからね」
「意地悪なんてされていません。とても親切にしていただきました」
この場ではなんて言うのが正解なんでしょう。
下手に仲良くなると監禁されると聞かされたあとですので、笑顔が引きつっているのが自分でもわかります。
「私、母の手伝いをしなければいけないのでこれで失礼しますね」
「待ちたまえ、セリスくん。帰りはうちの馬車で送らせよう。庶民の生活とはどういうものなのか聞いてみたいし、女性を一人で歩かせるなんてできないからね」
密室は危険よ、とミーナ様に言われています。
初対面で、これが初めての会話だというのに家まで送るなんておかしいでしょう。しかも勝手に愛称で呼んでくるし。
「心遣いはありがたいのですけれど、庶民は徒歩が普通なので歩いて帰ります!」
頭を下げて猛ダッシュ!
前を見ていなかったせいで、曲がり角で向こうから来た誰かとぶつかってしまいました。
衝撃でカバンの中身がちらばってしまいました。
「ご、ごめんなさい」
「悪い悪い。怪我してねーか、あんた」
尻餅をついた私に手を差し伸べて来たのは、ツンツン癖のある赤毛に人懐っこい笑顔の方。ローレンツ様でした。ミーナ様に見せていただいたお写真そのままです。
「怪我はないです。自分で立てます」
カバンの中身を集めるのを、ローレンツ様が手伝ってくださいました。良い人ですね。
教本はある、学院の教室案内図はある。……あれ、学生証はどこにいったの。
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