2 これが恋愛イベントというものですか

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「アラセリス。へぇ、あんたが噂の編入生か」  探しものはローレンツ様の手の中でした。 「拾ってくださってありがとうございます」  渡してくれるのかと思いきや、私の学生証をご自分の上着の内ポケットに仕舞いました。  前言撤回。この方は悪人です。 「返してください!」 「取れるもんなら取り返してみればいい。ちびだから無理だろうな、ほれほれ〜」  ローレンツ様はただでさえ私よりも背が高いのですから、ローレンツ様が頭上高くに(かか)げると、取れるはずありません。  こんな、こんな幼稚舎のこどもがするようなこと貴族の方がするなんて!  意地悪な人は嫌いです。大嫌いです。  半泣きでジャンプを繰り返していると、拳が飛んできました。 「ふざけるのはおよしなさい!!」 「ごふっ!」  ミーナ様が拳を振り上げ、ローレンツ様を怒鳴りつけたのです。 「ローレンツ。困っている人を、それも女性をいじめるなんて最低ですわ! お父上が聞いたら嘆きますわよ」  「わ、悪かった会長。俺が悪かったから。ほら、これはその子に返すから、な? な? 親父に告げ口するのはやめてくれ」 「謝る相手が違います。それに、わたくしが魔法士団長様にするのは告げ口ではなく、事実の報告です! 言葉は正しく使いなさい」 「わかったから! 許せよ、アラセリス!」  ローレンツ様は私の手に学生証を押し付けて、猟犬に追われる兎のように逃げていきました。 「ありがとうございます、ミーナ様!」 「もう。だからあれほど気をつけてと言ったのに。気を抜いたら負けよ、アラセリス。このあと買い物に行くようなら日を改めるといいわ。イワンに会ってしまうかもしれないから」 「はい。気をつけます」    ミーナ様が輝いて見えます。勇者様、救世主様、天使様、どう例えればよいのでしょうか。
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