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思い出の味
「本当に、おかしくないですか?」
一毬は着慣れないワンピースの裾を引っ張ると、前を歩く湊斗を見上げる。
湊斗は一毬に歩調を合わせながら歩いていたが、ふと立ち止まるとこちらを振り返った。
シャツにジャケットを合わせたカジュアルなスタイルだが、すらっと背の高い湊斗はどこにいても目を惹く。
普段部屋にいる時やスーツ姿とはまた違う湊斗に、思わずドキッとしていると、ふいに顎先をくっと持ち上げられた。
「似合ってるって言っただろ? 今すぐ、この場で食べたいくらいだ」
にんまりと口元を引き上げる湊斗に、一毬は一気に赤面する。
「もう! からかわないでください!」
一毬は照れるのを必死に隠すように、わざとぷりぷりと頬を膨らませた。
「ほら、お姫様」
湊斗は笑いながらそう言うと、そっと腕を差し出す。
一毬は笑顔に戻ると、その腕に自分の腕を絡めた。
湊斗が突然“実家に行く”と言い出したのは数日前だ。
一人で帰るのかと思って話を聞いていた一毬は、自分の紹介が実家に帰る目的だと知り、慌てふためいた。
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