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プロローグ
ローソルト大陸にある、緑豊かな小さな国カザール。
この国の近隣に、瘴気が濃い死の森と呼ばれるズローの森がある。その森に住む動物達が発生した瘴気にあたり、魔物化してカザール国の国民を襲った。
異常事態に国民は神に祈り、神様は願いを聞き入れ――のちに、神に選ばれし聖女が生まれた。
選ばれた聖女の祈りがカザールの国土を覆う程の結界を張り、魔物達から守ったのが始まりとされている。
それ以降、カザール国は聖女が祈りを捧げ、張った結界により魔物から守られていた。聖女なしでは国が成り立たないカザールだが……。
数ヶ月前、異国から新たな聖女が現れて、この国の王子が一目で恋に落ちた。今宵開かれた聖女十周年を祝う舞踏会で、その王子――金髪碧眼のローザン・カザールは黒髪、黒い瞳のアリカを連れて舞踏会へと現れたのだ。
そして、ローザンはアリカを引き寄せ、私を指差し。
「いいか、よく聞けヒーラギ嬢! 長年の聖女活動ご苦労だった……だが、我が国にも新しい聖女が現れた。貴女の聖女の力はこの国には必要なくなったのだ……僕と婚約を破棄してもらおう!」
グリーン色の髪と琥珀色の瞳、聖女と言われた私――伯爵令嬢ヒーラギ・サヘーラは王子に婚約の破棄を告げられた。だが私は驚く事も、悲しむ事もせず……少しだけ、口に笑みを浮かべ。
「そうですか……謹んで、婚約の破棄を受けたわまります」
深く頭を下げて、舞踏会の会場を後にしたのだった。
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