12話

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12話

「腹もふくれた、そろそろ行くかヒーラギ」 「うん、行こう」 「今日中に国境を越えてマギア森の中で一晩泊まり、明日になったら国の王都へ行こう」    ブランはマジックバッグにスラが綺麗にした道具をしまい、残ったピクルスの瓶をしまおうとして、ブランが声を上げた。 「スラ! お前はまたピクルスの漬け液を、全部飲んだな!」 「ニュ!」  ガーキンとジンセンの野菜は残して、ピクルスの漬け液を全て飲んだことがバレてしまったスラは。捕らえようと手を伸ばしたブランから"ピョン"と逃げて『ニュ(またね)』と鳴いて、マジックバッグの中に逃げて行った。 「あ、逃げるな! スラめ……相変わらずピクルスの漬け液好きだな、クックク」  スラにピクルス漬け液をすべて飲まれたのに、どこか嬉しそうなブラン。仕方ねぇ、食っちまうかとピクルスの瓶を私に渡してきた。  ブランが漬けたガーキンとジンセンのピクルスは、よく漬かっていて美味しい。 「ねぇ、ブラン。スラって、ピクルスの液が好きなの?」 「あぁ好きだな。なにせ、アイツと出会ったのも、ピクルスの漬け液が関わってるんだ」 「ピクルスの漬け液?」  あぁ、と頷くブラン。 「スラとは二年前かな? 今から行くマギア森とは違うシシンの森で出会ったというか、俺の採取中に俺が作ったピクルス入りの弁当をスラが全部食べちまったんだ。採取が終わって腹減ったって、弁当を開けたら中身は空っぽだ……」 「お弁当の中身が空っぽ?」 「そそ、俺はそのとき森に住む動物が食べたと、こんな場所にカバンを置いといた俺が悪いと思った。よく弁当を食べてるとき、森の動物が寄ってきたからな」  さっきのハンバーグも美味しかったから、ブランのお弁当も美味しんだろうな。   「それで」 「家に帰ったら見知らぬスライムが、カバンからニュルッと出てくるんだもんな驚いたよ。初めはシシンの森に帰そうとしたけど、一緒にいるうち仲良くなったんだ。スラは俺の作るものはなんでも好きで、特にピクルスの液が一番大好きなんだ」  ブランは楽しそうに、スラとの出会いを話してくれた。    2人でピクルスをポリポリ食べきり、瓶をマジックバッグにしまうと。ブランは食べ物ばかりの、私の荷物も全部マジックバックにしまってくれた。  空っぽになった布製のカバンは、ブランの魔力が戻ったら私専用のマジックバックを作ると言ってカバンにしまった。アタッシュケースはお金になりそうなので、国境近辺の街で売ることにした。 「さて、行くか」 「うん」  私は身軽になったし、国境近くの街までは徒歩で移動だと思っていたのだけど、いきなり腕につけて腕輪を触った。 「え、ま、待って!」  慌てる私に、ブランは不思議な顔をした。 「いまから移動するだろ?」 「するけど」 「俺が獣化して、ヒーラギを背に乗せるから服が邪魔なんだ」 「(獣化とか、わかんないけど)そ、それなら先に言ってよ」 「一度見てんだ、何度見てもかわりゃしねぇ」  と、私が見ていても気にしない、ブランに慌てて目を瞑り背を向けた。 「ヒーラギの耳真っ赤……クックク、照れるなよ。俺はヒーラギだったら見ても構わねぇ、こっち向けよ!」 「嫌です。向かないし、見ません!」  後ろを向く私の頬をモフモフが、モフンとくすぐった。 「ヒーラギ、獣化が終わったぞ」  その言葉に振り向くと馬より大きく、真っ白なモフモフの犬になったブランがいた。ブランはカバンを口に咥えて私に渡した。 「ヒーラギ、俺のカバン持っていて」 「う、うん、わかった」  可愛い見た目、いきなり抱きついたらブランは怒るかな……触りたい、もふりたい。 「モフモフ犬、いい」 「犬? ……あのさ、ヒーラギに一言言っておくけど、俺は犬ではない、オオカミだからな」 「え、狼?」 「何驚いてんだよ。ヒーラギ、犬と間違えた罰だ」  ブランに大きな舌で、ベロンと唇の辺りを舐めた。
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