23話

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23話

 要するに私が結界を強化したままだと、ブランたちの計画は台無しになった。色々私に話して、ブランはそのあと難しい顔をして黙ってしまった。 「ヒーラギ……パンが焼けた、食べて」 「ありがとう」  ブランは家族とは仲がよくないし、私は出会ってから、いままでブランに嘘をつかれていた。でも、これは魔王、竜人の友達、そしてブランたちの大きな計画の為。  魔王は、デュラン国の国民には手を出さないと言ったし。結果的に嫌いな王族と殿下、騎士団に人の手でだけど仕返しができたことになる。元々、一人の力では仕返しできないと思っていたから、胸のウチがスーッとているのは本音だ。 (ブラン達には感謝したいくらいかも)  だけど、それ以上、気になることが1つあった。  私はブランに作ってもらった、ケチャップとマスタードがタップリのホットドッグを豪快にかじりつき、味を堪能したあとに聞いた。 「話はわかったけど。ブ、ブランは……わ、私の事どう思っているの?」  ブランにはブランたちの事情があった。  この計画があったから、私のそばに居てくれたのかもしれないけど。ここまでの道中――ブランは優しくしてくれて、私は守られていただけで、危害は加えてられていない。    むしろ、お腹いっぱい美味し食事を作ってくれて、心と体は元気になった。これからも、ブランの料理を食べたいとでさえ思っている。  まぁ、嘘をつかれた事に対して、許すか許さないかは後で考えればいいし。ほんとうは全部お芝居で、私のことを、別になんとも思っていないのなら……この国を即座に出て、別の国に行こうと思う。 「俺が、ヒーラギの事をどう思ってるかって? 俺はズッとヒーラギが好きだ。いい大人が子供に恋をした……俺にはヒーラギだけだ、って……ブハッ! ヒーラギ、俺の必死な告白中。な、なんだ、その真っ赤な口わぁ!」 「え? 私の口が真っ赤?」   「プッ、そんなにケチャップを付けて……ハ、ハハハァ、可愛い」  ブランが大笑いした。ハンカチで口元を拭くと、私の口元には大量のケチャップが付いていた。今、ブランの話を真面目な顔で聞いていたのに……口元にケチャップを付けていたなんて、小っ恥ずかしい。  顔が熱い。  でもね、私だって言うわ。 「だって、ブランが作ってくれたホットドッグ。ソーセージがプリップリで美味しいからいけないの! もう一個おかわり」 「はぁ!」 「だから、おかわり!」 「おかわり……って」  ブランの顔がクシャリと歪んで、泣きそうなのを我慢しているのか、彼の頬は徐々に真っ赤に染まり顔を片手で隠した。でも尻尾は何かを耐えるように、パタパタと激しく動いてる。 「ダメなの?」  残念そうに聞くと「クソッ!」と声を上げて、隠していた真っ赤な顔と瞳を向けて、睨むような顔で私を見た。 「ヒーラギはなんで? ……なんで、そんなに優しくて可愛いんだよ……もっと、もっと好きになるだろう! 嫁に欲しい、俺の嫁になって」 「なってもいいけど……まだ出会ったばかりだから、嫁はまだ早いかな? ブランは私のこと知らないし、私だってブランのことよく知らないわ……私よりも年上なんでしょ?」  見つめると、目を逸らし。 「そうだよ、俺達は二十歳を終えると見た目が留まる、そのあとは緩やかに歳をとるんだ」 「緩やかに歳をとる……」  だとすると、ブランの方が長生き。 「だったら、ブラン……私は人間だよ、あなたより先に歳をとる」  その言葉の後にブランは再度、目を逸らした。    え? なんで?  ロンさんを見てもそらされて、スラまで、なんでみんな私から目をそらすの? 「ねぇ、ブラン? 何か言ってよ」 「いいや……あのな、非常に言いにくいんだけど。ヒーラギに母さんの癒しの力が移った時点で……ヒーラギはその、人とは別の人種になっていて。多分だけど、20歳を過ぎたら、俺と同じように成長が止まると思う」  ブランの言葉にロンさん、スラが同時に頷く。  ええ! 私ほ知らないうちに人間の枠を超えていた⁉︎ 「じゃ、私も20歳で見た目が留まるのね。だったら、今のうちに、もっと可愛くしておかないと……」 「はぁ?」 「だって、今の貧相な見た目だと……嫌にならない?」 「誰が嫌になるんだ?」 「ブランよ……これから、私と一緒にいてくれるんでしょ?」 「いるよ。ところでヒーラギ、さっきから可愛いことを言ってると食っちまうぞ! ――俺はコレでも、けっこう我慢している」 「え? 我慢?」 「これだけ言っても分からないなら、わからせる!」  ブランがいきなり私に抱きつき、カプッと頬を噛んだ。 『きゃっ!』その悲鳴にもっと火がついたブラン……ロンさんとスラが止めなかったら……もっと、恥ずかしいことをされていた……かも。 「ごめん、ヒーラギ」 「……」 「わるかった、許して」 「……」  森の中、ロンさんが魔法で出した枝と、スラの触手でグルグル巻き状態の、ブランはしきりに私に謝った。 「ごめん、気持ちが抑えられなくなって爆発した」 「もう、わかった。驚いたけど、嫌じゃなかったら」 「ヒーラギィ!」   「ブラン、落ち着いて! いま、魔王はどうなっているの? あと竜人のお友達は?」 「んー、いま魔王軍は人間の国と交戦中。ヤンは俺の父、弟達と交戦中だな。俺達はヒーラギの保護担当で戦闘に加わることはないから。終わるまでここにいるか、俺のウチに行くかだな」  ブランの家。 「私、ブランの家に行きたいわ」 「俺んちか? 来てもいいけど、何もないぞ」 「何もないことないわ、ブランがいるじゃない。早く食べて、片付けを終わらせて、ブランのウチに行こう! ね、ブラン、スラ、ロンさん!」 「ニュ!」 「そうだね」 「ちょっ、ヒーラギ! そんなに慌てて食べるなって!」
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