最終話

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最終話

 ブランのお母様、ジジさんから受け継いだ力を、大切に使います。 「安心しろ、ヒーラギの"癒しの力"は変な奴に使わせない」 「うん、頼りにしてるよブラン」 「やっぱり、ブランとヒーラギちゃんはいい夫婦になるわ。これからも、ウチの子をよろしくね!」 「母さん!」 「ジジ!」 「だって、二人とも私達みたいに仲良いじゃない。お母さん、早く孫を抱きたいの。もう、いいじゃない。夢ぐらい見させてよ!」 「わかった。俺が頑張るから、いまは黙ってくれ!」  真っ赤な顔のブランに止められる、お母様だった。  なんて、可愛いお母様だ。  ♱♱♱  話は終わったのかと、ロンさんとスラが玄関から顔を出した。どうやら癒しの力で怪我が治った、村の人達が感謝を言いに集まったらしい。 「そんな、感謝だなんて」  なんだか照れてしまう。 「ヒーラギちゃん、みんなの感謝の気持ちを受け取ってあげて欲しい。僕からもありがとうを言いたい」 「ニュ、ニュ!」 「スラ、わかったよ」  ロンさんとスラに急かされて外に出ると、村の人達は手に食べ物を持って集まっていた。なかには泣いてる人も見える。  最初に目を真っ赤にした、小さな羊の男の子が駆け寄ってきた。 「せ、聖女のお姉ちゃん、お父さん、お母さんと妹の怪我を治してくれてありがとう」  それをかわきりに、次々と感謝の言葉を聞いた。 「聖女様、動けるようにしていただき感謝します」 「ありがとう聖女様。僕、自分の足で歩けるよ」 「聖女のおねちゃん、本当にありがとう!」 「聖女様、お父さんの傷を治してくれてありがとう」  村のみんなの感謝の言葉が心に響く。 「よかった、みんなに癒しの力が届いて本当によかった」  私の瞳から、ポロポロと涙が流れ落ちる。  ソッと、ブランは私の肩を優しく抱き寄せた。   「みんな、よかった。それにしても結構な食べ物が集まったな、これを使ってみんなで鍋にするか!」 「お鍋? 食べたい! ちょうどお腹も空いてきたし、村のみんなでお鍋を食べましょう!」 「「おー!」」  ブランはマジックバッグの中から鶏肉と豚肉、お野菜と、村のみんなからのお礼に貰った野菜、魔物肉を使って鍋パーティーが始まる。 「うーん、鍋の材料は切ったが……後は具材を煮込む鍋が必要だな。ちょうど、家の中にどデカい鍋があったよな。ロン師匠、父さん手伝って」 「いいよ」 「わかった」  ブランとお父様、ロンさんは家から大きな鍋を持って出てきたのだけど…… 「それ、ポーションを作るときに使う、大鍋じゃない?」 「大丈夫! 綺麗に洗ったし、別にいいだろ」 「そうだね、いいっか!」  ブランの両親も参加して、残っていたコメをすべて炊き、ブランの庭に大きなカマドを作り、鍋を作り始めた。  お鍋はお肉と野菜たっぷりで、味付けはピリ辛味噌味。いつの間にかカマドの周りには、たくさんのお酒も用意されていた。 「コメが炊けたぞ!」 「食べやすいように、おにぎりにするわ」 「おにぎり!」 「おにぎり、作る!」  炊けたごコメは村のみんなが、おむすびにする。私も混ざって手伝ったのだけど……みんなより下手なオニギリ。落ち込んでいると、ブランがそれを取り先に食べてしまう。 「ヒーラギのオニギリ、美味い!」    大鍋に出来上がったピリ辛鍋を、訪れた人みんなに配って宴が始まる。日が落ちて辺りが暗くなると、ロンさんが光の魔法を使った。  ポフ、ポフと丸い光の玉が現れる。  その明かりの下、みんなの笑顔がキラキラ輝いている。それを眺めながら私は鍋を食べていた。そこに少し顔が赤い、ブランがやってきて隣に座った。 「ふぅ、飲んだ飲んだ……ヒーラギ、食べているか?」   「ええ、お鍋とオニギリ……皆さんより、たくさんい食べたわ。今デザートに食べている黄色と、赤い果物も美味しい」 「それはこの村で栽培されている、バナナンとリンゴンだな。ロン師匠が言うには元々、エルフの国で作られていたんだって」 「甘くて美味しいから、いくらでも食べる」  他にも、私の周りに見たことがない果物、食べ物がたくさん用意されていた。程よく酔ってきたのか村人達が、火を囲み踊りだす。  その中で、踊っていた青年が。 「聞いてくれてぇ、何年も動かなかった足が動くんだ! 自由に踊れる!」 「私も、手が自由に動かせるの」 「ボク、歩けるよぉ〜」  みんなでカマドを囲い鍋を突っつき、ある者は体が自由に動くと、足が動く、手が自由に動くと。みんなで喜び手を取り合い踊り、笑い泣きした。  そして最後に。 「「ブラン嫁のお陰だ!」」  と呼ぶ。 「うう、嬉しいけど照れる」 「ハハッ、照れるヒーラギは可愛い」 「もっと照れるよ、ブラン」  この喜びの宴は、朝方まで続いたのだった。  ♱♱♱  数日後。  魔王城にブラン、スラ、ロンさんと共に魔王様と王妃様に食事へと誘われた。初めてお会いした魔王と王妃……二人とも、絶世の美男美女で見惚れてしまった。  そのあと、アリカちゃんとも会った。 「あ、ヒーラギだぁ〜元気?」 「アリカさん?」 「そうだよ。ヒーラギ、ごめんね。あのときは……いくら演技だからと言って酷いことをたくさん言った、許してねぇ」 「うん、わかった」    アリカさんと話してみると、彼女はとても可愛い人で。自分の国の不思議な話をたくさんしてくれた……彼女は元の国へ帰るまでの一年間は、魔王様の所でのんびり暮らすらしい。 「でも、ヒーラギ、もしかするとわたし、元のところへは帰らないかも」 「え?」  アリカさんは魔王の側近で、彼女が言うにはイケメンの彼に恋をしたらしく。近々、告白するんだと彼女は言っていて、もし振られても諦めない! とも言っていた。  カザール国で会った時より、今の彼女の方が好きかも。    そして、魔王に制圧されたカザール国は隣国――シシロニア大国の配下となる。カザール国王陛下と王太子の処遇はについて、魔王は人の国は人に任せると「我達、魔族派は近々魔界に戻る」と発した。  魔王が魔界に戻ったあとの国は、ゴルバック国の領地となる。カザール国が吸収される隣国――シシロニア大国は発展途上国。シシロニア大国に全てを任せれば、平民達の暮らしは、今よりも遥かに良くなるだろう。 (魔王の話で……隣国シシロニアには素敵な皇太子と、立派な聖女様がいると言っていたから、安心だわ)  ゴルバック国はヤンさんとリコさん、ロンさんが中心となり、立て直すと言っていた。ブランの父親と兄弟――元の国王と息子達は、ロンさんの魔法で力を制限されて、新国王となったヤンさんの下で働くらしい。      それから、3年後の月にがたった。  魔王達は魔界へと帰った――アリカさんはなんと、魔王の側近と婚約してついて行ったのだ。  アリカさんもまた、この計画に巻き込まれた異世界人、彼女が幸せそうでよかった。  ゴルバック国の復興と土地の浄化は、ほぼ終わった。  ブランと私は宴会の一カ月後、恋人になり。  その1年前に婚約をして、2日前にブランの領地で、みんなに祝福されて結婚式を挙げた。    本日。私達はスラ入りマジックバッグ、ブランに作って貰ったマジックバッグを持ち、しばらく新婚旅行に出る。  結婚前に、私が「違う国を見たり、美味しいものを食べてみたい」と言った言葉を、ブランが叶えてくれた。  新婚旅行の期間は未定。  お金がなくなったら、冒険者ギルドに登録して、稼ぐ計画だ。取り敢えず長く、色んなところに行ってみたい。  ブランと結婚する前、シシロニア大国に吸収された国で頑張る、弟のギリジアンに。   「お姉ちゃんは隣国で、元気だよ!」 「結婚をして、しばらく旅に出ます!」  と、書いた手紙を送った。  戻ってきた、ギリジアンからの祝福の手紙に「こっちに帰ってこい!」「帰って金を稼げ!」「金がない!」と、うるさい両親の手紙がひっついていた。……今まで、散々遊んだ両親のことはどうでもいいかな。  天気は良好! 「トールお父様、ジジお母様、ロンさん、みなさま、ブランと新婚旅行に行ってきます!」 「ロン師匠、母さん父さん、みんな、いってくる」 「ニュ、ニュ!」 「ブラン、ブラン嫁、スラ、気を付けて行っておいで」 「ブラン、ヒーラギちゃんをしっかり守るのよ」 「ブラン、ヒーラギ、スラ、気を付けて」  たくさんの人々に見送られて、私達は新婚旅行に行く。 「行きましょう、ブラン、スラ!」 「ああ、行こう! 疲れたら言えよ、俺の背に乗せてやる」 「うん、ありがとう」  いつも、優しい旦那様だ。   「ニュ、ニュ!」 「え? スラも疲れたら、抱えてくれるの」 「おい! スラ、ヒーラギは俺の大切な嫁だからダメだ」 「ニュ!」  あ、新婚旅行の前に喧嘩⁉︎ 「ちょっと、二人とも喧嘩しないの! ほら行くよ!」 「行こう!」 「ニュ!」  楽しい、楽しい、旅行の始まりだ!    それから数日後――新婚旅行の途中で、色々あったけど、その話はまた今度するね! 《お読みいただきありがとうございました。》
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