3話

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 私、伯爵令嬢ヒーラギ・サーヘラ十八歳は、カザール国の元聖女で、第一王子ローザン・カザールの元婚約者だった。    どうして、私が聖女に選ばれたのかと言うと。    八歳の時に弟、ギリシアンが負った大怪我に私が触れたとき。なんらかの(聖なる力)が発動して、一瞬で大怪我を癒してしまったらしい。  私はそのときの反動で気絶して、そのときことを全く覚えていないのだけど……あっ、という間に痕も残らず、綺麗に弟の傷を癒やしたときいた。  その力を知った両親は『娘に奇跡の力』が宿ったと、一番は金になると大喜びした。――そして舌の根が乾かぬうちに『うちの子に神から奇跡の力を授かった』と、招待された社交界に出ては、私の自慢話を貴族達にして回った。  瞬く間に、噂は国中に広がる。  人々は五年前に病気で亡くなった、大聖女様の後継者が生まれた。この国に新しい聖女が誕生したと喜んだ。 『聖女様、私たちの傷を癒してください』 『癒しの力をかけてください』  それは、それは国中から奇跡の力を求めて、伯爵家の領地にまで人々は押し寄せた。  当時八歳の私には朝から晩まで、癒しの力を使うのは困難だった。風邪を引き、寝不足で『体調が悪くて無理です』と両親に言っても、2人は話を聞きいてれなかった。  そして決まって。   『ヒーラギ、癒やして差し上げなさい』 『癒しは貴女しかできないのよ』 『素晴らしい力は使わなくてはね』  と、言うのだった。    口答えをして、叩かれるのが嫌な私は『……はい』と言うしかなく、両親に言われるまま訪れた人の怪我を癒した。後で知った話なのだけど……両親は治療のお礼として金品、お金、宝飾品、鉱山を受け取っていたのだ。  この奇跡の力で、多額の金が手に入ると分かった両親は……癒す対象を金持ち、貴族達に変え、お金のない者は追い返しはじめた。  癒しを受けて貴族達の話は広がり、サンドリア伯爵領にどんな傷でも癒やす娘がいると、この噂は王都に、王の耳にまで届く。 『それは誠か?』 『はい、聖女の生まれ変わりだと、噂も立っております』  カザール国は今、五年前に亡くなった大聖女が張った、国土を覆う結界が薄くなり。森に瘴気が溢れ、魔物化した魔物が増えてきていたのだ。  この噂を知った国王陛下は、聖職者たちに命令した『なんとしてもその娘を、新聖女として向かい入れろ!』と命令した。  国王かれ命令を受けた、聖職者達はサンドリア伯爵領まで訪れ、聖女は国には必要だと両親を説得し。金ズルがいなくなると渋る両親に聖職者達は、一生遊んで暮らせるだけのお金を見せた。 『これ凄い』 『足らなくなれば、いくらでもお渡しいたします』 『いくらでも?』    お金に目がくらんた両親は、国王陛下の頼みならと快く、私を国に売った。国王陛下はすぐ、新聖女がカザールの国に誕生したと国民に知らせ、聖女として私を王城の離れに住まわせた。  早朝五時。 『聖女様、お祈りの時間です』  聖職者達は大聖女様が行っていた、毎朝五時から祭壇で祈りを一時間、昼に二時間、夜に一時間、カザール国のために祈りを捧げさせた。祈りと言っても大聖女が張った国土を覆う結界を補強するだけ。  最初は出来ないと思っていた、結界の強化が私に出来てしまった。  それから毎時間祈りを捧げないと、食事が貰えず食べられない。少しでも寝坊をすれば、引きずられて祭壇に座らされた。彼らは両親のような、暴力は振るわれなかったけど、祈りは強要させられた。  それには訳がある。  1つは森の動物達の魔物化。  もう1つはカザール国の近辺には魔王が収める、ジュストラルクという魔族の国があった。古代歴史書によれば三百年前に勇者が冒険者仲間と魔王を倒して、ジュストラルク国は滅びたと記されていた。  魔王がいないと安心したのも束の間――最近、新しく魔王が誕生したらしく、静かだったジュストラルク国は勢力を増した。この国の平穏な日常が終わる。  魔族たちは瘴気を放ち隣接するズロー森の近くの、サタナの森を超えてカザール国に攻めてきたのだ。  魔物におびえた国王陛下は『聖女、聖女様のお力をお貸しください』と、当時十二歳になったばかりの私に願った。
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