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今日の茶子には惚れ直す。那智のためにだけ口を開き、母親と笙子の強い口調に負けない毅然とした対応をしている。半ば捨て身の行動も美しい。これで、このストレートヘアでなく茶子本来の、お洒落なパリジェンヌのような緩いウェーブがかった髪を無造作に束ねているとさらに美しいに違いないのに…そう思いながら彼女の頭を撫でると、雅貴と笙子の視線が厳しく茶子に突き刺さる。
笙子のそれは、自分のスペアである茶子が肯定され自分が否定されるような展開が、気にくわないという視線。
雅貴のそれは、自分と結婚するかもしれない女に俺が触れていることへの嫌忌の視線。雅貴は笙子と気が合い、気に入っているにも関わらず‘スペア’と聞いた時から笙子も茶子も自分に向いていて当然と思っている部分がある。そこも俺は許せない。
野田家の茶子への仕打ちと扱い、雅貴の茶子への身勝手な言動…笙子との結婚が決まったから今後そういった言動はないかもしれないが、相変わらずの視線…これらには茶子の方が幸せになることで見返してやる。
ただ茶子が幸せなだけでは響かない相手だ。無駄なプライドだけが揃って目立つ相手には、分かりやすくそのプライドの上を行ってやらないと響かないのだ。
「那智のそれは、いつの予定だ?」
俺がそう聞くと、初めて那智が俺に助けを求めるような視線を寄越す。ああ…茶子を置いて行くのか、笙子の結婚式後がいいのか、その辺りの迷いがあるのだろう。
「まだ決定はしてない?」
「…うん」
「じゃあ、俺もひとつ…今日は皆さんに話があります」
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