episode 9ヶ月前

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episode 9ヶ月前

婚姻届を提出してからの1ヶ月…あまい…アマイ…甘い…翔貴が甘い。 広すぎないLDKが心地良い新しい我が家には、あと2部屋ある。一部屋は翔貴の仕事部屋、もう一部屋が寝室で…一緒に寝るの?と戸惑いはあったけれど 「茶子から俺に触れたくなるまで抱かない。絶対に茶子が嫌がることはしない」 と宣言されて一緒に寝ている。そして、宣言通り‘抱かない’翔貴だが、寝起きからおやすみまで、チュッ…チュッ…とあちこちにキスが降ってくる。私が嫌がることではないというのも事実で…翔貴のキスは、私が大切にされてもいいんだ、私を見てくれている、と安定剤のように感じる。 彼は会社を辞めるからと二度出勤した以外は、私の結婚後のいろんな手続きに付き合ってくれて、この部屋の物や私の物を買い揃えるために一緒に出掛けてくれて、私が5日間だけ仕事に出ると迎えに来てくれて…本当にべったりと一緒に過ごしているのだが疲れないどころか、翔貴といると安心感がある。 好きになる予感…なんて言葉が頭を掠めるのを否定することなく、23時半にキッチンにいる私のところへ翔貴が来た。彼は朝のテキサス州のクライアントとのミーティングが終わったのだろう。 「茶子、何してるんだ?」 チュッ…こめかみにキス…いただきました… 「…クロックムッシュもどきを朝食にしようと思って…」 「もどき?」 「そう。ただフレンチトーストの甘くない卵液にパンを浸けておくだけ。これを朝、バターで焼いてチーズとハムを挟むと‘もどき’が完成」 そう言い終わる時には、翔貴の両腕は後ろから私に巻き付き、頭に顎が乗っている。これもよくある甘い立ち方だ。
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