6981人が本棚に入れています
本棚に追加
「茶子さんと結婚させて下さい」
話があります、そう言って座布団を外した翔貴が何をするのかと見ていると、私の両親の方へ膝を向けて正座し畳に手をつけてゆっくりと頭を下げた。
私と結婚…?
トン…トントン…
彼の背中に‘もしもし?’という気持ちで軽く触れると
「翔貴、いきなりの話だね。野田も驚いてる。もう少し説明が必要じゃないか?茶子ちゃんとも話はしてるのか?」
穏やかなおじさんの声が翔貴の頭を上げさせた。
「茶子のことはずっと前から好きだった。いつからか分からないくらいずっと前から」
そう言い私の隣に座り直した彼は、さっき彼の背中に触れた私の手を大きな座卓の下でぎゅっと強く握った。
「社会人として、人として十分に茶子を守れるようになったら結婚したいと考えてビジネスを軌道に乗せ、広い世界でたくさんの人と会うことで、ビジネスと収入という外面も自分自身の内面も整えてきたつもりです。今なら茶子を幸せに出来ると確信して結婚を申し入れました」
あまりにも堂々と宣言する翔貴に、驚いていたはずの私も異論がないと感じてしまいそうだ。
「今なら茶子を幸せに出来るって…翔貴の言う結婚っていつ?まるで今すぐにでもっていう勢いに聞こえるが?」
「今すぐ、今このまま結婚してもいいくらい準備は出来ているし、何より茶子が凛と綺麗で離れたくないと思っている」
何ですと?雅貴くんの問いかけに対する翔貴の返答には驚いて彼の横顔を見ずにはいられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!