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「まず、仕事は個人事業一本にする」
「うちを辞めると?」
「気ままに働いていたように思われているかもしれないけれど、名前だけの役員が高い年棒をもらうのではなく、向こうでしか出来ないことを初任給のまま何年もやってきたつもりです」
「それは認めるよ。アメリカの観光客向けのサイトなどに広告をうつなどは向こうにいてこそ効果的なポイント、ポイントで出来たことだね」
「うちを辞めるのはいいよ。跡継ぎは二人もいらないからな」
おじさんに続く雅貴くんの言葉は、私が言われ続けている‘スペア’を思い出させるもので、私は翔貴の手をきゅっと握った。
大丈夫だよ、翔貴。翔貴はスペアなんかじゃなく、立派に独立した大人だよ。
「だけど、結婚までしてやっていけるだけの稼ぎがあるのか?自立、独立なんて偉そうに言っても金がないと惨めだろう?」
「収入はご心配なく。マンションも契約済みだから本当に今すぐでも大丈夫」
「どうやって?1週間前に帰国したばかりなのに…」
「正月に帰国した時には仮契約で押さえておいたから、今回は簡単に手続きが出来た。問題ない。他に質問、どうぞ」
雅貴くんはきっと翔貴の収入を聞こうとした。だけど、翔貴は具体的には答えることを避けて話を変える。姉もまだ聞きたそうにしてるけれど‘他に’と言われれば収入については聞けないよね。
「ご心配なくって、個人事業の年収っていくらなの?」
嘘でしょ?…聞くの?それはあまりにも失礼でしょ?
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