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「ありがとう、茶子」
そう言いながら私をそっと抱きしめた翔貴は
「絶対に幸せになれるよ、茶子…まずは今から自由を手に入れよう」
私の耳に唇を触れさせながら囁いた。
「さすがアメリカ生活をしていた翔貴ね…ハグが自然だわ」
姉の尖った声にふっと笑った翔貴は、私の頭を撫で
「言葉が軽いな…今のはただのハグじゃない。愛情を込めた抱擁だよ…茶子の心を包み込みたいからね」
と真っ直ぐに姉を見た。そしてそのまま
「茶子、結婚は今すぐだが結婚式は未定ってことでいいか?」
私に言っているようで皆に宣言するように続ける。今、自由を手に入れようと彼は言ってくれているんだ。
「うん、いいよ」
「「ちょっと、待ちなさい」」
「はい、待ちますが?おばさん?笙子?何?」
「私の結婚が先よ」
「そうよね、笙子が先」
「そんな決まり、どこにありますか?」
「決まりって…でも茶子は私達が反対する間は婚姻届が出せないわよ?」
「どうしてですか?今すぐ出せますが?」
「証人が必要でしょ?」
「僕がチャコの証人になるから、今すぐ出す?」
「那智、ありがとう。出すよ。那智は今から俺の弟だ」
驚いたことに、翔貴の持っていたバッグには婚姻届もマンションの鍵も揃っていて、本当に今すぐ結婚生活を始めるのだと実感した。
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