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二人で役所へ婚姻届を提出した後、マンションへ向かいながら
「茶子、気分は?」
と聞いてみる。
「翔貴は?」
「俺は茶子のことが好きだから嬉しくて、守りたい、幸せにしたいという気持ちで…そして…スペアなんて言ってた者から茶子を引き離せて胸をなでおろしてる。俺と茶子が家族なんだから」
乾杯で1杯だけビールを飲んだからタクシーで移動している、その後部座席で茶子は俺に目を向けた。
「翔貴と家族っていう響きは…違和感ないね」
「日隈茶子は?」
「どう?そのうち慣れるかな?」
「すぐだよ、きっと」
「うん…翔貴を信じてみようと思ったの。甘えることになるけれど…私は自由になりたい…ふふっ…いざ、そうなったからって何をするって訳でもないけれど」
「そういうものなんじゃないか?鬱陶しい視線や言葉から逃れるってことだけ…それだけでほら、もう茶子がずいぶんと話してくれる。言葉数が違うよな」
「…そっか…翔貴」
「うん?」
「これからお世話になります。出来るだけのことは全力でするから遠慮なくビシバシと言ってね」
「俺が好きでしたこと。頑張る必要はない…着いたよ」
夕焼けに照らされる地下1階、地上12階建マンションの前でタクシーを降りると
「わぁ、マンションだ…」
吹き出しそうなくらいの感想が茶子の口から漏れて笑える。
「エントランスを開けるのにも操作が必要だ、覚えて。8階だよ」
「うん…お邪魔します」
「邪魔なものか。俺と茶子の家だ。何をしてもいい、何もしなくていい…誰にも気兼ねなく生活する空間だよ」
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