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「翔貴」
「うん?」
返事をしながら彼は私の手を握って私を見た。何でも聞くよ、言ってみて…という翔貴の気持ちが彼の手と視線から伝わってくる。
「…欲張ってもいいかな?」
「欲張り、いいんじゃないか?茶子のは好奇心旺盛、向上心が強いっていうポジティブな欲張りだと思うから」
「翔貴はすごいね」
「うん?」
「私は…翔貴の言葉が大好き」
「うん」
「いつも落ち着いたトーンで肯定的な言葉をくれるの…でも私に何も押し付けないし、考えさせてくれる」
「うん」
「この1ヶ月ね、私の頭は久しぶりにクルクルといろんなことを忙しく考えたよ…それまでは…」
私は何を話しているのだろう…翔貴の穏やかな相づちと、時折撫でられる手の甲の感覚とに促されるように話しているのは、いつの間にか仕事と関係ないことだ。
「それまでと、何かが変わったんだな?」
彼は口を閉じた私に先を促すかのように私の頬を手のひらで包むと、親指で唇ギリギリをゆっくりと撫でた。
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