episode 9ヶ月前

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「それまでは…考えることは無駄だった…考えて自分で意見を持っても、行動しても否定されるなら…何も考えないで言われたようにするのが…何て言えばいいのか…安全だったの」 チュッ…翔貴は私の頬を手のひらで包んだまま、初めて唇にキスをした。 「茶子の言いたいことは痛いほど…悔しくて腹が立つほど分かる…俺もスペアだと言われたけれど、18で家を出たからな…茶子はプラス10年ほどあの環境にいたんだ…茶子を迎えに行く完璧な準備に時間がかかって悪かった。もっと早くに連れ出してやりたかった」 私は翔貴の瞳が揺れるのを見つめながら 「雅貴くんたちの結婚の日取りが完全に決まらないと私は出られなかったと思うから…今だったんだよ」 出来るだけ何でもないように伝える。 「俺は準備が整えられたら、無理やりにでも茶子を連れ出すことも考えていたよ。訴訟になっても勝てるとか、いろいろ考えてな。でも那智が学生の間に野田の家を掻き回すのもよくないかと考えもした」 「うん…翔貴は間違ってないと思う。ありがとう」 「…もう掻き回してもいいな…」 「ぇっ…?何かするの?」 「いや…俺が何もしなくても、茶子の苦しみくらいのことは起きる可能性はあるってこと。因果応報だよ。それで?俺の可愛い奥さんは、何を欲張るの?」 そう話を元に戻した翔貴は、私が口を開こうとしたのを唇で塞いだ。
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