episode 9ヶ月前

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「茶子」 はにかんだ視線を落としたままの茶子をぐいっと持ち上げ俺の膝の上に座らせると 「俺を見て」 弱々しく見える茶子の背中をそっと撫でゆっくりと声を掛けた。静かに俺の胸から喉元、顎先へ移る茶子の視線が止まり、その瞳は揺れている。 「何が不安?言ってみて」 もう一度、視線を俺の喉元へと下げた茶子は少し考えたあとで口を開く。 「不安とは違うかも…」 「うん」 「…翔貴はずっと前から私を迎えに来ることを考えてくれていた…それに…その想いに私は…これからどうやって…どれだけ返せるものがあるのかと………好きなの…だから私も翔貴のために…何か出来るかなって…」 さらに茶子の視線は俺の胸へと下がった。 「ありがとう、茶子」 視線を下げた茶子の頭を抱えて強く抱きしめずにはいられない。 「茶子がこうして毎日俺と一緒に居てくれるだけで嬉しくて、俺のことを考えてくれていることは幸せ。茶子の存在が大事なんだ…返すなんて考える必要ないけれど、好きの言葉で倍返しをもらった気分…茶子が言葉を飲み込まずに、笑っていられたら俺は幸せで満足だよ」 抱え込んだ頭を撫でながら口づけ、彼女に選択肢を持たせる余裕ある音色を心がけて言葉を続けた。 「もっと…触れてもいいか?俺の全てで茶子を愛したい」
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