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episode 10ヶ月前
「翔貴くんの完全帰国を歓迎して、乾杯」
「「「「「乾杯」」」」」「「「おかえりなさい」」」
よく集まる家族だよね…先月も雅貴くんと姉の結婚が1年後に決まったと言って日隈家と野田は集まって乾杯したばかりだ。ただ、そこには翔貴はいなかったけれど。
「チャコ、食べないの?」
右隣から弟の那智が私の顔を覗き込むと、左隣から伸びてきた大きな手のひらがペタッ…私の額にへばりついた。
「出たわね、翔貴の過保護」
「茶子限定」
私の向かいに並んで座る姉と雅貴くんが呆れたように言ったあとに
「熱はないな。嫌いな物もなさそうだぞ、茶子?」
翔貴が私の顔を覗き込む。皆よりちょっとワンテンポお箸を持つのが遅れただけだもの…熱なんてない。
「…いただきます」
那智も過保護なところがあるからこういう事態に陥るんだけれど、家族の集まりで那智が私を気遣うのはあの軟禁以来ずっとだ。
「相変わらずの愛想なしだわね、茶子は」
「本当に…ごめんなさいね」
姉と母が皆にこう言うのも何度目だろうか。姉が雅貴くんと結婚すれば私はここに居なくてもいいのだろうか…
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