6978人が本棚に入れています
本棚に追加
全てを冷静に見ていた那智は軟禁が始まってから2週間後、俺に連絡をくれた。小さな時から俺と那智は馬が合う。
親の徹底的なスペア扱い。笙子もおそらく、自分の影のように生きてきた茶子が自分の知らないボーイフレンドと一緒に過ごしたことに腹を立てたということだろう。あくまでも自分のスペアだと言わんばかりの言動なのだと思う。
「那智、俺が茶子を自由にする。でも、今回のことを見てタイミングが重要なことは分かるな?茶子だけ連れ出してもまだ那智は学生なことや、連れ出すからには今よりも遥かにいい暮らしを茶子が出来ないと…」
‘ほらね、やっぱりスペアだ…そう言われるだろうね’
「その通り。だから今は那智が茶子を守ってくれるか?」
‘もちろんだよ。今までもそうしてきたつもり…チャコがだんだん話さなくなることに気づいた時から’
「そうだったな。那智の進む道もしっかりと考えてくれよ?」
‘うん。野田屋は先細り感が拭えないから跡継ぎは必要ないと思うんだ。本家と一本化されるはず’
「それなら尚更、しっかりと考えて。お互いに家の名前のない場で、自分の力で生きていけるようにしよう」
俺もまだ学生だった。茶子を十分な環境に連れ出すための努力は始まったばかりだ。
アメリカの大学で必死に勉強しながら、学生で起業する者の勉強会やイベントに積極的に参加して、何がビジネスになるかを探り続ける。
そして卒業する直前にたどり着いたのが‘ビジネスマッチング’だ。
その時には‘cafe days’に入社することが決まっていたが、アメリカのカフェリサーチなどと理由をつけて、帰国しなかった。そして俺の個人事業として、日本とアメリカの小さなクライアントをマッチングさせることに少しずつ成功する。
最初のコメントを投稿しよう!